抄録
霊長類種間で採食品目が異なることが報告されているが、その分子的・生理的基盤は明らかになっていない。我々は食物選択に関わる味覚受容体に着目し、味覚受容体の遺伝的多様性が採食品目の多様性にどの程度寄与しているのか検討している。これまで、旧世界ザルや類人猿で苦味受容体の遺伝子変異が受容体の応答性を変化させ、採食品目の種間差・個体差に与える影響を示唆してきた(Suzuki et al., 2010; Hayakawa et al., 2012; Imai et al., 2012)。本研究では、新世界ザルに注目し、苦味受容体の遺伝子変異と受容体機能との相関を検討した。
マーモセット、オマキザル、クモザル、ヨザル、ホエザルの苦味受容体TAS2R1とTAS2R4について発現ベクターを作成し、培養細胞で発現した受容体の機能をカルシウムイメージング法で検討した。その結果、ヨザルTAS2R1がショウノウに対して、マーモセットTAS2R4がコルヒチンに対して他種より高い感受性を示すことがわかった。祖先型を推定した解析により、祖先型のTAS2R1とTAS2R4の感受性は低かったが、ヨザルTAS2R1とマーモセットTAS2R4の進化の過程で高い感受性が獲得されたことが示唆された。