理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DO042
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骨・関節疾患(整形外科疾患)
同時発生の注意要求課題が変形性膝関節症患者の姿勢制御機能に及ぼす影響
*高橋 昭彦木俣 信治市村 幸盛香川 真二津村 暢宏平田 総一郎
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抄録
【はじめに】 整形外科系の運動器疾患を対象に,認知的側面を含めた姿勢制御機能について検討した報告は皆無である.本研究では,これまで関節位置覚などの体性感覚低下が指摘されながらも,筋力低下や可動域制限といったバイオメカニカルな要素のみが注目されてきた変形性膝関節症(以下,膝OAと略す)の姿勢制御機能について,知覚・注意などの認知過程から検討することを試みた.【対象と方法】 対象は,当院に手術目的で入院した術前内側型膝OA16例(以下,膝OA群と略す)で,男性3例,女性13例,年齢は70.8±6.4歳であった.また比較対照群として健常高齢者12例(以下,健常群と略す),年齢は66.6±3.9歳,男性3例,女性9例に同様の検査を実施した.全ての対象者には,研究の趣旨を説明し同意を得た.測定には,アニマ社製ツイングラビコーダG-6100を用いた.サンプリングタイムは20msecとし,各条件において20秒間の立位を記録した.肢位は両踵部間を8cm,開脚60°とした.静止立位時の自動化のレベルを調べるために対象者には単一の注意要求課題と同時発生の注意要求課題が与えられた.単一の注意要求課題として出来るだけ左右対称で立つように指示した.このとき視覚に対する注意は与えなかった.同時発生の注意要求課題としてはこれにStroop testが加えられた.Stroop testでは,約86(幅) cm×62(高さ) cmのサンプルを目の高さでスクリーンに映しだした.25文字(5字×5行,1字約8cm×8cmの大きさ)の色と読みが一致しない色つき文字を提示した.対象者は立位の左右対称性を維持しながら文字を読む強い傾向を抑制しつつ,左から右へ出来るだけ速く文字の色を読み進めるように求められた.【結果】 膝OA群における単一課題遂行時の重心動揺距離は215.4±124.7mmに対し,同時発生の注意要求課題時の重心動揺距離は303.5±107.4mmであり,両課題の間に有意な差を認めた(p<0.05).健常群では,それぞれ181.8±42.9mmと212.5±51.4mmであり有意な差を認めなかった.【考察】 今回の結果から,膝OA群と健常群では注意要求の同時性によって姿勢制御機能に及ぼす影響が異なることが明らかとなった.健常群では同時発生した注意要求課題を遂行しながらも姿勢動揺は大きく変化しないが,膝OAにおいては姿勢動揺の大きな変化を示し,両群の姿勢制御方略の質的・量的な差違を反映していると考えられた.すなわち健常者では,立位を保持するための方略が状況に応じ自動的に選択されるのに対して,膝OAでは変更可能な方略が乏しく,注意のフィルターが感覚情報以外に向けられた時,姿勢制御機能は大きく破綻し,立位という日常的な動作であっても自動化のレベルが低いことが推測された.本研究によって,膝OAの病態をバイオメカニカルにのみ捉えるこれまでの観点では不十分であり,認知過程の異常から観察される必要性が示された.
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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