理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DO828
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骨・関節疾患(整形外科疾患)
仙腸関節機能不全と運動機能 第2報
重心動揺からの分析
*山本 尚司大藤 晃義大場 弘紅林 格本多 直人野田 直子
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抄録
【はじめに】仙腸関節機能不全(以下SIJD)は、抹消関節の痛みや可動性のみならす、立位荷重バランスにも影響を及ぼしており(第20回関東甲信越理学療法士学会にて報告)、下肢筋力や柔軟性などの運動機能そのものを反映している(第37回日本理学療法学術大会にて報告)。今回、我々はSIJDと重心動揺との関係について調査し、その姿勢制御について興味ある知見を得たので報告する。【対象】被験者は、健常成人29名(男性17名、女性12名、年齢30.6±17.9歳、身長166.7±10.1cm、体重62.8±9.0g)であった。【方法】1)仙腸関節機能不全の評価は、Dejungの方法に順じ、片脚立位における左右の上後腸骨棘(PSIS)の上下降をパルペーションにて確認し、下降がみられない固定側をSIJDとした。2)重心動揺:前方を注視した閉足直立位にて、重心動揺計(木更津高専製)を用い、開眼および閉眼の順に30秒間測定した。次に、閉眼にて順後不同にて前後左右へ最大体重移動を行った位置でそれぞれ30秒間測定を行った。データ分析は、X(左右)方向Y(前後)方向の平均値(mm)を求めた。3)データ処理:開閉眼直立位間および閉眼直立位からの前後左右体重移動時の差について、左右のSIJD群に分け比較検討した。統計にはt検定を用い、危険率5%以下を有意差ありとした。【結果】右側にSIJDがみられたものは12名、左側は15名であり、2名についてはSIJDが認められなかったので除外してデータ処理を行った。開閉眼直立位における前後左右値に、有意な差はみられなかった。閉眼直立位からの体重移動時の差については、右側SIJDを基準とした場合、左への体重移動時に有意に前方への動揺がみられた(p<0.05)。また、前後体重移動において左側動揺が有意に、右側体重移動でさらに右側への動揺がつよくなる傾向がみられた(p<0.05)。【考察】我々はPI腸骨側では荷重しやすく下肢筋力も強くなる傾向がみられることを報告してきた。今回の結果では、視覚的に遮断した状態での直立位においては、前後体重移動時にSIJD側と反対方向への動揺がつよくなることが示された。静的な状態では仙腸関節の正常側に荷重傾向がみられるが、動的にはSIJDが壁となって体重移動を妨げているものと考えられる。また、左右への体重移動においてはX方向で対応しきれなかった動揺については、前後の動きにて制御していることが考えられる。また、他の姿勢制御の方法としてY方向に動揺を逃がすのではなく、SIJD側にあえて乗り上げて姿勢制御していることも推測される。これは、直立位での左右荷重バランスの比率にって変わってくるものと考えられる。今後さらに、荷重バランスと姿勢制御との関係について検討しいきたい。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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