理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DP134
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骨・関節疾患(整形外科疾患)
腰椎変性すべり症例における立位姿勢の検討
第3報
*石井 美和子石井 慎一郎赤木 家康
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抄録

【はじめに】腰椎変性すべり症では立位姿勢や立位動作において症状の増強を認めることが多い。これまでの我々の調査では立位姿勢の矢状面および前額面上の姿勢因子がすべり椎間に影響を及ぼす可能性が示唆された。臨床場面においてこれらの症例では回旋を伴った非対称姿勢を観察することも多い。そこで今回は、腰椎変性すべり症例の自然立位における水平面上因子を加えて調査を行った。
【方法】対象は腰椎変性すべり症例18例(全例L4高位、平均71.2歳)とした。腰椎単純X線側面および正面画像より、前方すべり率、側方すべり率、腰椎側屈角度(L1椎体とS1上縁のなす角度)、星島らの方法を用いてL2/3からL5/Sまでの腰椎各椎間における回旋角度を算出した。また第2仙椎、両側腸骨稜、両側踵部に標点を置き撮影した全身後面写真より骨盤傾斜角度(両側腸骨稜を結んだ線と水平線のなす角度)、骨盤側方変位距離(S2から両側踵部を結んだ線の中点を通る鉛直線への距離)を求めた。さらに、両側上後腸骨棘に標点を置き頭部上方より骨盤回旋角度(両側上後腸骨棘を結んだ線と前額面のなす角度)を計測した。前方および側方すべりの程度と腰椎回旋度、腰椎骨盤肢位の関連性について検討した。
【結果】1.前方および側方すべり率と腰椎回旋角度
前方すべり率の平均は12.8%であった。9例に側方すべりを認め、同例では平均3.6%の側方すべり率であった。腰椎回旋は18症例中12例に認められた。腰椎回旋角度の平均はL2/3で1.2°、L3/4で3.3°、L4/5で4.2°、L5/Sで0.4°であり、すべり椎間での回旋度が最多で角度も最大であった。前方すべり率と腰椎回旋度には一定の傾向を示さなかったが、側方すべりが認められる例では腰椎回旋度が高値を示す傾向が認められた。
2.前方および側方すべり率と腰椎骨盤肢位
 前方すべり率と腰椎側屈角度、骨盤側方傾斜角度および骨盤側方変位、骨盤回旋角度の間には一定の傾向はみられなかった。一方、側方すべりを呈する例ではそれらの値が大きい傾向があり、側方すべり率が高い例では骨盤側方変位距離が大きい傾向が認められた。
【考察】今回の結果は、非対称な立位姿勢がすべり椎間に影響を及ぼしている可能性を示唆するものとなった。特に側方すべり椎に回旋が伴っているという結果から、腰椎の側屈と回旋の複合運動が大きく影響しており、すべりを発生しやすい解剖学的因子に加えて姿勢因子によってすべりが助長されることが考えられる。腰椎変性すべり症に対する運動療法を展開する上で、すべり椎間の安定化だけでなく可及的に腰椎骨盤肢位の非対称性の軽減を図ることもすべり椎間への負担を減らし進行を防止するための重要な留意点であると考える。しかし症状回避のために非対称姿勢を呈している場合もあることから、静的場面のみの評価では不十分であり今後は動的場面における因子の検討を進める必要性が示唆される。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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