理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DP229
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骨・関節疾患(整形外科疾患)
骨関節疾患の術後患者における床からの立ち上がり動作
*矢野 歩杉浦 武金城 安奈吉田 正弘
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抄録

【はじめに】 日本人特有の和式生活では床からの立ち上がり動作獲得が必須であり,評価や指導の対象となることが多い。本研究の目的は術後高齢者における床からの立ち上がり動作の特徴を把握し,今後のADL指導および訓練に役立てることである。【対象】 当院にてクリティカルパスの導入および進行が順調であり,理学療法処方症例数が多い腰椎固定術(以下PLF)および全人工膝関節置換術(以下TKA)後患者23例を対象とした。内訳は男性6例,女性17例,平均年齢73.8±5.9歳,術後平均経過日数20.6±8.9日であった。【方法】 患者に行いやすい床からの立ち上がり動作を指示し,デジタルビデオカメラにて記録した。測定は二回とし,頭側と側方から一度ずつ撮影した。なお患者に時間やパターンの指示は行わなかった。動作パターンは健常高齢者を対象とした星らの報告に従い,以下のとおり分類した。 1)起き上がり相:A:Full rotation pattern(一度腹臥位となる)B:Partial rotation pattern(体幹を部分回旋する)C:Non rotation pattern(体幹を回旋しない)。2)立ち上がり相:a:Plantigrade pattern(高這い位を経由)b:Half-kneeling pattern(片膝を立てる)c:Squatting pattern(しゃがみ位から立ち上がる)【結果・考察】 23例中22例が動作遂行可能であった。不可能であった1例を除く22例の動作パターンは,起き上がり相はAが0例,Bが16例(72.7%),Cが6例(27.3%)であった。立ち上がり相はaが20例(90.9%), bが2例(9.1%),cは0例であった。 さらに今回高い割合を示したBおよびaパターンに注目し,分類を加えた。Bパターンは体幹の回旋と屈曲の複合運動であり,側臥位を経て体幹側屈を伴う屈曲運動が起こる回旋有意群が12例,体幹の屈曲運動が先行し長座位を経る屈曲有意群が4例であった。屈曲有意群はTKA患者のみであり,PLF患者は全例が回旋有意群であった。aパターンは高這い位から立位への移行に膝関節と体幹の伸展が必要であり,各伸展運動が並行する同時群が6例,膝の完全伸展が先行する膝伸展先行群が14例であった。同時群はPLF患者のみであり,TKA患者は全例が膝伸展先行群であった。PLF患者群とTKA患者群にパターンの相違を認めたことより,動作パターンに疾患部位が影響すると考える。床からの立ち上がり動作は多関節の複合運動であるため,他関節での代償運動にて術後高齢者でも動作の獲得は可能であると予想される。しかし術後機能改善を目標とする中,疾患部位への負荷を避ける動作指導が適切であるかは疑問が残る。術前後での比較や術後経過に伴うパターンの推移調査を今後の課題としたい。

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