抄録
(はじめに) 中枢神経障害における運動麻痺は、量的変化のみならず、質的変化を伴うと言われている。質的変化の一つに身体・肢位の変化による麻痺筋の筋力の変化があげられる。今回我々は、脳血管障害により左片麻痺を呈した患者の仰臥位から立位まで(0゜、30゜、60゜、90゜)の各肢位における足部背屈筋力を徒手筋力計(アニマ社製Hand Held Dynamometer:以下HDDとする)で測定した結果、質的変化を定量的にとらえることができたので報告する。(対象及び方法) 被験者は2002年8月8日発症の右放線冠に梗塞巣が認められた脳梗塞の患者(男性、年齢53才、Brunnstrom stageVI)1名、31才の健常男性1名であった。方法は、足部背屈筋力の測定はHDDを用い、抵抗は第1、2趾のMP関節部に加えた。足関節の角度0゜より背屈してもらい、関節が背屈位とならない様に抵抗を加え、その時の最大値(・)を測定値とした。測定は各5回行い、その平均値を評価値とした。測定は左右の足部で行い、肢位の変化は、ティルトテーブルを用い、0゜、30゜、60゜、90゜の順序で行った。各測定間には筋疲労の影響を考慮し、充分な間隔をおいた。統計処理には分散分析を用い、危険率5%未満をもって有意とした。(結果及び考察) ティルトテーブルの角度、0゜、30゜、60゜、90゜における評価値は、脳梗塞患者では、麻痺側11.50、10.58、6.02、4.76、非麻痺側20.88、19.16、17.22、17.38で、健常者では、右側23.10、23.44、22.48、22.12、左側21.52、21.84、22.18、21.98であった。健常者では左右とも各肢位における評価値に有意差は認められなかったが、CVA患者では麻痺側、非麻痺側とも、0゜と比較し、60゜、90゜では有意に低い値を示した。また60゜、90゜における評価値の低下の程度は、麻痺側に著明にみとめられた。一般にCVA患者では臥位よりも立位おいて伸展パターンが強く見られ、今回の我々の結果でも同様の傾向が認められた。また、非麻痺側でも同様の結果が得られたことより、非麻痺側は健側ではないことが示唆された。(まとめ)・CVA患者における運動麻痺の質的変化を肢位による筋力の変化として定量的に評価した。・健常者では認められなかったが、CVA患者では立位に近くなる程、足背屈筋力は低下した。