理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: FP145
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神経・筋疾患
廃用性筋萎縮におけるアポトーシスカスケード
*永野 克人洲崎 悦子永野 由美片岡 勝子山下 敬介青山 裕彦吉井 美智子石原 熊寿小澤 光一郎
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抄録

【はじめに】我々は、ラット後肢懸垂法により筋萎縮を惹起させ、アポトーシスの実行因子であるカスペース3の活性化を免疫組織学的に明らかにし、その筋萎縮にはアポトーシスが関与することを報告した(第37回本学術大会)。さらに脳虚血神経細胞死にみられるミトコンドリア依存性経路を介する場合とは異なり、そのカスペース3の活性化にはリソソーム系タンパク質分解酵素が関与することを示した。しかし、廃用性筋萎縮におけるアポトーシスカスケードの上流域については未だ解明されていない。そこで、廃用性筋萎縮において引き起こされるカスペース3活性化の誘導因子を明らかにするために、小胞体、ミトコンドリア、リソソーム、に各々局在するカスペース12、シトクロームc、カテプシンDについて免疫組織学的に解析した。さらに初期アポトーシスシグナルと考えられている一酸化窒素と活性酸素による脂質過酸化の影響も同様に検討した。【方法】Wistar系雄性ラット9週齢(273±7g)を対照群(CON)と後肢懸垂群(HS-3W)に分け、各群を5匹として3週間飼育した。屠殺後、ヒラメ筋を用いて凍結切片を作製した。アポトーシスのマーカーは活性型カスペース3とした。また、カスペース3活性化誘因因子と考えられているカスペース12、シトクロームc、カテプシンDについて免疫蛍光染色を行った。さらに脂質過酸化の影響を調べるためにアクロレインとeNOS、nNOSについても免疫蛍光染色を行い共焦点レーザースキャン顕微鏡にて解析した。【結果および考察】HS-3Wにおいて観察された活性型カスペース3陽性筋線維では、シトクロームcの減少とカテプシンDの細胞質流出が観察された。しかし、筋内ではミトコンドリア非依存性シグナルであるカスペース12が過剰発現した筋線維も認められたが、カスペース3陽性筋線維の局在とは一致しなかった。また、eNOSとnNOSの局在はCONと比較して顕著な変化は認められなかった。一方、過酸化脂質のマーカーであるアクロレインは、CONでは細胞膜の一部に弱い染色が認められたに過ぎなかったが、HS-3Wでは細胞膜及び細胞質で陽性が認められた。以上の結果より、廃用性筋萎縮におけるアポトーシスは、ミトコンドリア非依存性シグナルによると考えられ、初期アポトーシスシグナルには活性酸素による脂質過酸化が関与することが示唆された。また、カスペース12の過剰発現とカスペース3の活性化との関連に対してはさらに検討が必要と考えられた。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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