抄録
【目的】当院リハビリテーション科では慢性進行性の経過をたどる神経難病患者に対して,継時的変化を追跡でき,各進行時期に対応できる評価法を模索している.昨年,当院のpre-studyでは,望月重症度分類・International Cooperative Ataxia (ICARS)・Barthel Index (BI)・簡易上肢機能評価(STEF)・Physical Cost Index (PCI)・拡大ADLの評価スケールの関連性を検討し,重症度を反映する評価スケールはICARSとBIであることを示唆した.そこで,本研究では,これらの評価法の長期試用での時間的経過の変化について継時的に検討を行ったので,報告する.【対象・方法】対象は脊髄小脳変性症(SCD)患者8名(男性3名,女性5名,平均年齢60.3±8.1歳)である.SCD分類の内訳ではMachado Joseph(MJD)7名,オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)1名であった.方法は,初回・6ヶ月後・一年後と一年間にわたり,ICARS及びBIの評価を行った.統計学的分析として,分散分析及び多重比較検定を用いて継続的な変化を検討した.【結果】分散分析の結果,ICARSに継続的な変化が有意に認められた(P<0.05).一方,BIには変化が認められなかった.ICARSに対する多重比較検定の結果,初回より,一年後の比較において有意に高い点数をとり(P<0.05),身体機能レベルが低下した.【考察】ICARSは主に失調症状を反映している評価表で,全部で19項目あり,姿勢と歩行7項目・動的機能7項目・発話障害2項目・眼球運動障害3項目の5段階評価となっており,SCD患者に対する薬効判定などの評価として,世界的に使われ始めている.今回の結果,ICARSでは統計的に有意な変化を示すが,BIでは変化が認められなかった. ICARSの変化は他の評価表より詳細に病態変化を捉えていると推測され,impairmentレベルの変化をより客観的かつ詳細に反映しているものと考える.一方,BIでは評価表自体がグローバルであり,時間的要因の変化を十分には追跡できず,SCD患者にとっては進行自体がどうdisability レベルに影響しているかが 反映しづらいものと考えられた.また,BIでは量的な変化,つまり出来たか・出来なかったかをとらえているのであって,同じ自立でも楽に出来るのかあるいは努力が必要であるのかなどの質的な変化を評価する事が難しく,そのため,時間的変化が見られなかったと考えられた.今後は生活の質を捉えられ,より詳細なADL評価を併用し,Disability レベルでの時間的変化を捉えていく必要性がある.