抄録
【はじめに】近年,低出力超音波パルスの骨形成促進効果が注目され整形外科領域や理学療法の臨床場面に応用されている.しかしながら,超音波刺激による骨形成促進に関する in vitro での報告は少ない.本研究では,正常培養ヒト骨芽細胞normal human osteoblast cell system (NHOst) を用い超音波刺激が細胞分化に与える影響を経時的に検討した.【方法】NHOstを重合ポリマー膜底培養皿に播種し培養した.対照群 (C群) と超音波刺激群 (US群) の二群に分け,US群には培養 1,3,5日目にシリコンパッドを介して培養皿底面から超音波刺激を行った.刺激条件は,0.2W/cm2 ,1Mhz,パルス波,3分/日とした.NHOst の形態学的変化を培養24時間後から28日後まで経時的に観察した.骨芽細胞の分化の程度をみるため単位面積あたりの骨結節の発生数をカウントした.また,骨芽細胞の活性化・石灰化を検出するため,アルカリホスファターゼ (ALPase) と von Kossa 法による二重染色を行った.そして,骨基質タンパクであり骨芽細胞の最終分化マーカーでもあるオステオカルシンタンパク質の発現をwestern blotting によって検出した. 【結果】C群の細胞は,紡錘形の形態を示し,培養5日後に細胞集団(コロニー)を形成した.US群の細胞も同じく紡錘形の形態であったが,細胞突起を長く伸ばすものが多く観察され,コロニーは培養3日後に形成された.骨芽細胞の分化の指標である骨結節の発生は,US群では培養12日後から加速的に増加し,そのサイズもC群に比べて大きくなった. US群の細胞は von Kossa 染色で濃染し,石灰化を検出した. オステオカルシンの発現をみるとC群は培養10日後に発現したのに対し,US群は培養5日後から発現を認め,その発現強度もC群より強かった.【考察】本研究から低出力超音波刺激が培養ヒト骨芽細胞の分化を促進することが示唆され,臨床場面での骨形成促進効果を支持する結果となった.今後は,骨芽細胞の分化における細胞内シグナル伝達系などの物理的刺激受容のメカニズムに関する研究を進め,超音波療法の臨床所見との接点を明らかにして行く必要がある.