理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: FP588
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神経・筋疾患
外乱刺激に対するパーキンソン病者の立位姿勢保持に関する研究
第一報
*田口 孝行中田 英雄池田 誠水上 信智溝呂木 忠田口 直枝井口 佳晴宇澤 和美小林 裕希子長谷川 卓志西原 賢井上 和久久保田 章仁細田 多穂
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抄録
【はじめに】パーキンソン病(PD)は1817年にJames Parkinsonによって初めて報告された。PDの症状には固縮、無動、振戦、歩行障害、平衡機能障害があり、特に平衡機能障害は日常生活に多大な制限を及ぼしている。本研究では外乱刺激に対するPDの立位保持時の下肢筋活動と重心動揺の特徴について検討した。【方法】被験者は地域在住のPD 5名(男性2名、女性3名、45から71歳)と、健常高齢女性5名(57から69歳)とした。PDの重症度はHoehn-Yahrの重症度分類でstageIが1名、IIが3名、IIIが1名であった。使用機器は平衡機能検査装置EQUITEST SYSTEM Ver.7.0(NEUROCOM社製)とLeg1000(日本光電社製)とした。被験者の右前脛骨筋(TA)と右腓腹筋(GAS)に表面皿電極を貼り付け、平衡機能検査装置のプラットフォーム(PF)上で開眼立位を保持させた。その後、PFを前方または後方に10cm/sで3cmの距離を移動させた。PF移動前に口頭指示による合図を行ったが、口頭指示からPF移動までの時間は任意とした。また、前方および後方どちらに移動するかについての指示は与えず、任意に各10回施行した。本報告ではPF後方移動について検討した。【分析方法】1)重心動揺:PFの4個のストレンゲージからPF移動中(300ms)における垂直分力をサンプリングタイム10msで記録し、重心動揺量の指標としてRMSを算出した。高齢者とPDのRMSの差の検定には対応のないt検定を使用した。2)筋電図(EMG):TAとGASの筋活動電位はサンプリングタイム1 msで記録し、PF移動中の積分筋電図(IEMG)を算出した。その後、TAとGASの総IEMGより活動割合(%IEMG)を求めた。【結果】1)重心動揺:健常高齢者とPDの平均RMSは各々0.59±0.04、0.77±0.27であり、PDが有意に大きな値を示した(p<0.05)。2)IEMGとEMG波形:健常高齢者のTAとGASの%IEMG(TA:GAS)の平均は40:60であった。PDでは20:80と活動割合の差が大きい2名と、健常高齢者に近似した3名に分かれた。しかし、PD5名すべてのEMG波形にはTAとGASのcoactivation(協調性のない共同筋活動)が観察された。【考察】本研究の結果より、外乱刺激による立位姿勢保持のための反応において、PDではTAとGASのcoactivationが出現しており、重心動揺も健常高齢者と比較して大きかった。この現象はPF移動中300msで生じており、脊髄反射レベルの反応も障害されている可能性が示唆された。したがって、臨床上多く観察されるPDの前方への重心移動を伴う動作の困難さには、随意的な動作の問題だけでなく、反射的な筋活動の問題も存在することが示された。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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