抄録
【はじめに】近年NICUの赤ちゃんに対しディベロップメンタルケアのひとつとしてポジショニングを導入する施設が増えており、その効果も多数報告されている。当院でも1999年より、PTも関与してポジショニングを実施している。そこで今回、我々が行っているポジショニングが本当に児にとってストレスの少ない、適切な姿勢なのかを検討する目的で、ブラゼルトン新生児行動評価(以下NBAS)のひとつであるHabituation(慣れ現象)の項目を評価し、ポジショニングの効果を検討したので報告する。【対象と方法】低出生体重児で出生し保育器管理となった児10例(男児6例、女児4例)を対象とした。平均出生体重は1590±355g、平均在胎週数は31.7±2.5週、評価時平均修正週数は33.5±1.8週であった。方法は、いわゆる屈曲姿勢を保持した良肢位と、そこから逸脱した不良肢位について、まず評価前のStateを判定し、NBASの慣れ現象の項目のうち、光に対する漸減反応とガラガラの音に対する漸減反応および呼吸数、心拍数、SpO2を評価し、それぞれについて良肢位と不良肢位で比較した。なお統計学的分析は、慣れ現象についてはWilcoxonの符号付順位検定、呼吸数、心拍数、SpO2については対応のあるt-検定を用い危険率0.05以下を統計学的有意とした。【結果】Stateは、良肢位、不良肢位ともState1が5例、State2が5例であった。NBASの慣れ現象について、光に対する漸減反応では、良肢位が平均7.9点、不良肢位が平均6.1点と良肢位が有意に高く、ガラガラの音に対する漸減反応でも良肢位が平均8.1点、不良肢位が平均5.9点と良肢位が有意に高値を示した。しかし、呼吸数、心拍数、SpO2については統計学的に有意差は認めなかった。【考察】NBASには、睡眠中の侵害刺激に対する睡眠状態の維持能力、子宮外の予測不可能な刺激に対する自己防衛機能の評価として慣れ現象の項目がある。今回、ポジショニングと慣れ現象の関係について検討した結果、いわゆる屈曲姿勢を保持したポジショニングをとっている方が慣れ現象が起こりやすいことから、児にとっても睡眠中の侵害刺激に対する自己防衛(調整)が容易であることを示唆している。しかし、ポジショニングを実施する際、一旦良好な屈曲姿勢に保持できたとしても、すぐに体を動かして、良肢位をとれなくなっている児を見ることがある。今回の結果より、すぐに移動してしまう児に対して、睡眠の維持や安静を保つためには、良肢位に修正すべきであると思われるが、不良姿勢のほうが慣れ現象が起こりやすい児も認めた。その児は、不良肢位であってもState 1の状態を維持しており、State 2での良肢位よりも慣れ現象が起こりやすかった。このような児はAlsの新生児行動システムのうち、状態(睡眠・覚醒)系のコントロールが出来ている可能性も考えられるため、画一的なポジショニングではなく、その児にあった方法で行う必要があると考える。