理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: BO527
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運動・神経生理
関節可動域訓練が末梢神経損傷後の神経再生に及ぼす影響
組織学及び電気生理学的所見からの検討
*田村 将良水野 雅康塚越 卓谷本 正智磯山 明宏
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抄録
【はじめに】 近年,末梢神経損傷に対する早期リハビリテーションアプローチとしては,二次的損傷の予防を目的とした電気刺激,装具の使用,他動的関節可動域訓練(以下p-ROMex.),マッサージなどが一般的に施行されている。しかし,いずれの手技においても直接神経再生に及ぼす効果について記載した文献は散見される程度である。そこで今回,演者らはp-ROMex.の末梢神経損傷後の神経再生に対する効果を検討する目的で,以下の研究を行ったので報告する。【対象と方法】 対象はWistar系雄ラット15匹(平均体重343.0±11.0g)とした。このうち5匹は健常群として扱い,残りの10匹は,ネンブタールにて腹腔内麻酔をした後,それぞれの右大腿部後面より坐骨神経を露出させそれを手術用持針器にて3分間圧挫し創を閉鎖した。その後,無作為に術後訓練群(訓練群)5匹,術後無処置群(無処置群)5匹に振り分けた。訓練内容は,術直後よりp-ROMex.を右膝関節に対し1セットfull range5回,1日昼・夕の2セットとし,週5日の頻度で4週間継続実施した。訓練終了後,3群共に再び坐骨神経を露出し,それぞれの坐骨神経の神経線維径とハムストリングスの筋線維径,さらにMizunoの方法によるハムストリングスにおける単一筋線維筋電図(SFEMG)の活動電位の振幅(AMP),潜時(LAT),持続時間(DUR)を測定し,比較検討を行った。【結果】 SFEMG所見の比較について,AMPでは無処置6.55mVに対し訓練群13.6mVと有意に増加(p<0.01)を認め健常群18.0mVに近い値を示した。LATでは無処置1.54msecに対し訓練群1.34msecと有意に短縮(p<0.01)を認め,健常群1.20msec に近い値を示した。DURでも同様に無処置群3.19msecに対し訓練群では2.40msecと有意に短縮(p<0.01)を認め,健常群2.05msecに近い値を示した。なお,坐骨神経・ハムストリングス組織の結果は,現在集計中であり,当日発表する予定である.【考察】 今回の結果から,無処置群に比べ訓練群では,AMPの増大,LAT・DURの短縮が認められ,より健常群に近い値となった。Hakanssonらによると,筋線維の活動電位の振幅はその筋線維径に比例するとされており,まだ筋線維径のデータは集計中であるが,AMPの増大は筋線維径の増大を推測させる。また,筋線維の伝導速度はDUR,神経・筋の伝導速度はLATに反映されていると考えられ,LAT・DURの短縮は神経・筋の伝導性の改善を推測させる。 一般的に,p-ROMex.の効果は,関節拘縮や筋萎縮,浮腫の予防,運動感覚の入力などが挙げられる。一方,今回の研究結果より,新たにp-ROMex.の効果として,脱神経筋に対する神経再支配を促通し,筋活動と神経伝導性の改善を来す可能性が示唆された。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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