理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: BO528
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運動・神経生理
アジュバント関節炎ラットの後肢に対する熱刺激の影響
*中野 治郎友利 幸之介沖田 実吉村 俊朗本村 政勝江口 勝美
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抄録
【目的】 慢性関節リウマチ(RA)患者の多くは、炎症による痛みのために身体活動が減少し、廃用性筋萎縮が頻発している。そのため、理学療法では炎症を抑えつつ、廃用性筋萎縮の進行を予防することが重要であるが、効果的な手段については明らかではない。一方、近年の先行研究では熱刺激が廃用性筋萎縮の予防に有効であることが報告されており、RA患者にも応用可能な手段と思われる。ただ、熱刺激が炎症の増悪や関節炎の進行を招く可能性も否定できない。そこで今回我々は、RAの実験モデルであるアジュバント関節炎ラットの後肢に対し熱刺激を負荷し、ヒラメ筋の廃用性筋萎縮の進行抑制効果を検討するとともに、炎症や関節炎におよぼす影響を検討した。【材料と方法】 8週齢のLewis系雌ラットを1)対照群(C群)、2)熱刺激を負荷する群(H群)、3)アジュバント関節炎群(A群)、4)アジュバント関節炎に熱刺激を負荷する群(AH群)に振り分けた。A群、AH群には、起炎剤としてフロイント完全アジュバント(3ml)を皮下注射により投与し、関節炎を惹起させた。また、H群、AH群には起炎剤投与7日目から2週間、麻酔下で約42度の温水浴を後肢全体に負荷し、これを1日1時間、週5回の頻度で行った。実験期間中は、足関節の腫脹の程度を評価するため足部幅を測定し、起炎剤投与3週後に麻酔下で尾静脈から採血を行い、炎症の指標である血沈速度、血清シアル酸値を測定した。また、両側のヒラメ筋と足関節を採取し、筋は急速凍結の後に横断切片を作製、ルーチンATPase染色を施し、タイプI・II線維の筋線維直径を測定した。足関節は固定、脱灰後、パラフィン包埋し、その縦断切片をHE染色し、検鏡した。【結果】 1)足部幅:A群、AH群は、起炎剤投与10日目から急激に増大し、C群の約140%に達した時点でピークとなった。また、この2群の足部幅の推移、程度に有意差はなかった。2)血沈速度と血清シアル酸値:両指標ともA群、AH群はC群やH群より有意に増加していたが、A群とAH群に有意差は認められなかった。3)平均筋線維直径:タイプI・II線維ともA群、AH群はC群やH群より有意に小さかったが、A群とAH群を比較するとAH群は有意に大きかった。4)足関節組織:A群、AH群には、滑膜細胞や線維芽細胞の増殖、滑膜・腱周囲の浮腫が認められた。また、AH群の一部に骨破壊像が認められた。【考察】 今回の結果から、足部幅、血沈速度、血清シアル酸値はA群とAH群に有意差を認めず、平均筋線維直径はA群よりAH群が有意に大きかった。したがって、熱刺激による炎症の増悪はなく、廃用性筋萎縮の進行抑制効果も伺えた。しかし、AH群の一部には骨破壊像が認められ、熱刺激は関節炎の病態進行に悪影響を与える可能性が高い。そのため、今後は熱刺激の温度条件や刺激方法を再検討する必要があると考える。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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