理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: HP781
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呼吸器疾患
労作時息切れに対し心肺運動負荷試験が有用であった1症例
*矢内 優里滝音 健朗長谷川 祐子中田 英男岡田 美里山元 香代高尾 匡
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抄録
【はじめに】呼吸・循環器系疾患患者に対し,CPXを施行し,病態の把握や運動処方が行われている。今回我々は,労作時息切れを主訴に来院した患者に対し,CPXを施行し,運動負荷により引き起こる呼吸・循環系の応答特性や異常応答反応から息切れの要因を分析できた症例を経験できたので報告する。【症例】68歳,男性。主訴は労作時の息切れ。既往歴に呼吸・循環系の疾患はない。現病歴は平成14年2月頃より労作時の息切れを感じ,同年7月に当院内科を受診した。外来時現症は,BMI26.6,心拍数,呼吸数,血圧は正常範囲内。心臓エコーでのLVEF 72%,CO 3.68l/min,右室拡大なし。胸部X線撮影像,CT所見は異常なし。肺機能検査では,%VC 113%,1秒率74%,残気率39%,V(dot)25は0.38l/s/m,V(dot)50/V(dot)25は4.32であった。【方法】自転車エルゴメーターを用いてRamp負荷を行った。運動中は呼吸代謝測定システム(ミナト医科学株式会社:AE-320)にて各種換気指標を測定すると同時に,12誘導心電図にて心電図,心拍数を測定した。また,安静時,最高運動負荷直後に動脈血ガスやBorg scaleを測定した。なお,対象患者には,CPX,血液採取の説明を充分に行い,同意書に署名を得た。【結果および考察】運動終了理由は目標心拍数(220-age×0.8)に達したためであり,終了時の呼吸困難感はBorg scale10段階中7,下肢疲労感は5であった。安静時,運動負荷中の心電図異常なし。酸素脈は10ml/beat以上であり,心拍出量は十分であるため,循環系の異常は無い事が示唆された。各種換気指標は,最高負荷時のV(dot)E/V(dot)co2は35.3,V(dot)E/V(dot)o2は36.1であり,V(dot)E/MVVは0.85と呼吸予備能の軽度低下が認められた。また,換気効率を示すV(dot)E-V(dot)co2slopeの急峻を認めた。Slopeの急峻は換気血流不均等分布が起因することが知られている。本症例は循環器動態が正常であり,肺機能検査にて肺の末梢気道病変を認め,換気血流の特に二酸化炭素排出障害が息切れの原因であることが示唆され,COPDの初期の状態であることが考えられた。一般にCOPD患者へのCPXは重症例を対象とした報告が多く,目標心拍数に達する前に呼吸困難感により中止してしまい,応答特性を把握し難いことや,運動処方が困難なことが挙げられている。しかし,本症例は症状が軽いため目標心拍数まで負荷試験が可能であり,息切れの原因追求や,安全な運動処方が可能であった。【まとめ】労作時息切れを訴える患者に対するCPXの結果,呼吸・循環系の異常応答反応の検討が可能であった。今回の結果を基に、COPD軽症患者に対し運動処方を行い,運動を習慣づけることで非活動的になることを避け,運動耐容能低下を予防することは重要であると考える。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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