理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: IO837
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循環器疾患
透析患者の心臓外科術後リハビリテーション経過
小切開冠動脈バイパス術について
*石黒 正樹林 久恵中村 真弓森山 善文後藤 里香小羽 正昭熊田 佳孝鳥山 高伸川原 弘久
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抄録
【はじめに】小切開冠動脈バイパス術(以下MIDCAB)は手術侵襲が少なく腎不全,脳梗塞等合併症を有する症例に対し広く施行されている.しかし,透析患者の心臓外科術後経過に関する報告は少ない.そこで今回,透析患者の心臓外科術後の経過を明らかにすることを目的に非透析患者との比較を行った.【対象】99年9月から02年3月までに当院でMIDCABを施行し,心臓リハビリテーション(以下心リハ)を行った透析患者(以下HD群)14例(平均年齢63.5歳)と非透析患者(以下NHD群)10例(平均年齢70.4歳)を対象とし,全例術前歩行が自立していることを条件とした.【方法】当院ではMIDCAB術後は両群で同様の2週間入院プログラムを使用している.術後心リハは術翌日より端座位を開始,術後約1週間にて院内歩行自立を目標としている.術後経過として手術日から端座位,トイレ歩行,院内歩行自立,退院日数を後方視的に調査し比較検討を行った.その他心機能(術前左室駆出率,冠動脈病変枝数),併存疾患の有無,院内歩行自立が1週間より遅延した症例においてはその理由も調査した.統計はt検定,χ2検定を使用し有意水準は5%未満とした.【結果】HD群:NHD群の年齢,術前左室駆出率50±15:59±11(%),冠動脈病変枝数(3枝病変3例:3例,2枝病変4例:3例,1枝病変7例:4例)に有意差を認めなかった.術後から端座位はHD群:NHD群で1.9±0.8日:1.9±0.5日,トイレ歩行3.0±1.1日:3.3±1.1日,院内歩行自立6.1±3.8日:4.5±1.3日,術後在院日数10.4±3.8日:11.6±3.5日でいずれも有意差を認めなかった.併存疾患(HD群:NHD群)は脳血管障害1例:7例,高血圧症12例:4例,閉塞性動脈硬化症9例:2例,心不全11例:3例,整形疾患3例:1例であり有意差を認めた.院内歩行自立遅延例はHD群3例(11-18日),NHD群では認めなかった.原因は低心拍出量症候群1例,心不全1例,不整脈1例,透析血圧管理不良2例であった.(重複例あり)【考察】術後経過においてHD群とNHD群に有意差を認めず,MIDCAB術後では透析の有無に関わらず2週間の入院プログラムでの心リハ実施が可能であることが確認された.理由としてMIDCABの利点である小切開,人工心肺を使用しないといった低侵襲であったことが挙げられ,また透析患者の術後合併症に好発と言われる創治癒遅延,感染症等を認めなかったことも考えられる.しかしHD群は潜在的なものも含め多くの併存疾患を有し,術後合併症が加味されることにより容易に院内歩行自立遅延,術後在院日数の延長が起きる可能性が高い.今回の結果よりHD群は心臓由来の術後合併症の他,透析療法に伴う循環動態の不安定性を配慮し心リハを進行していく必要性があると考える.
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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