理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: IP689
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循環器疾患
早期リハビリテーションプログラムにおける運動耐容能の効果と運動習慣に対する影響
*柳澤 千香子齋藤 康人押見 雅義鈴木 昭広斎藤 恵礒部 美与横関 真里洲川 明久玉城 哲雄永澤 英孝
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抄録
【目的】近年AMI症例の急性期心臓リハビリテーションプログラムは短縮化の傾向がある。今回早期離床、早期退院へ向けた早期リハビリテーションプログラムを施行することで運動耐容能や左心機能にどの程度影響するのか、また患者教育への影響についても検討を行った。【方法】対象はポンプ失調や重症心不全などの合併症がなく、比較的心機能の保たれている初回AMI症例58例(平均年齢56.4±11.3才、maxCK1859.6±744.1u/l)である。早期プログラム群(S群)27例と通常プログラム群(C群)31例に無作為に前向きに振り分け、2群間で検討を行った。入院時の緊急冠動脈造影により梗塞責任血管が確認され、全例で冠動脈形成術が施行された。運動耐容能については、AMI発症後1・3・6ヶ月後に心肺運動負荷試験を行いAT・PeakVO2値を測定した。左心機能については、急性期と慢性期のRIにより左室拡張末期容積(EDV)、収縮期末期容積(ESV)を求め左室リモデリングについて検討し、駆出率(EF)の変化を求めた。運動習慣の継続については、質問紙によりアンケート調査を行った。【結果】1.運動耐容能についてはS群では、AT時のVO2は1ヶ月目14.2±3.5ml/min/kgから3ヶ月目16.5±9.5ml/min/kgと有意に増加(P<0.05)したが、それ以降は著変みられなかった。PeakVO2においても1ヶ月目25.4±5.0ml/min/kgから3ヶ月目27.0±3.6ml/min/kgと有意に増加(P<0.05)したが、それ以降は著変みられなかった。C群では、AT時のVO2は1ヶ月目13.8±1.9ml/min/kgから3ヶ月目15.4±2.1ml/min/kgと有意に増加(P<0.05)したが、それ以降は著変みられなかった。PeakVO2においても1ヶ月目24.6±4.2ml/min/kgから3ヶ月目26.2±4.6ml/min/kgと有意に増加(P<0.05)したが、それ以降は著変みられなかった。また1・3・6ヶ月のAT・PeakVO2値の両群の比較において有意差はみられなかった。2.左心機能の変化についてEDV・ESV・EFを両群間、そして急性期と慢性期間にてそれぞれ検討した。EDV・ESVは、S群・C群の両群間、急性期・慢性期間にて、それぞれ有意差はみられなかった。EFは、急性期49.6±6.7%に比べ慢性期58.3±5.7%に有意な改善(p<0.05)がみられたが、両群間にて有意差はみられなかった。3.運動習慣なしは、S群が1ヶ月後18.5%・3ヶ月後以降33.3%、C群が1ヶ月後22.6%・3ヶ月以降19.4%であった。また週4回以上ありは、それぞれS群が33.3%・33.3%、C群が48.4%・58.1%であった。【考察】合併症がなく比較的心機能の保たれているAMI症例では運動耐容能に影響を与えずに、安全な早期プログラムの施行や入院期間短縮化が可能であった。早期退院をすすめる上での問題点として、心負荷の過剰な増加による致命的合併症の誘発や、また生活指導を含めた患者教育の不足があげられる。今回の結果からも運動習慣の継続についてC群と比べS群で不足していた。それらを十分配慮した上で更なる患者教育を含めたプログラムをすすめる必要があることが示唆された。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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