抄録
【はじめに】日本透析医学会統計調査(2001年12月31日現在)によると、2001年透析導入患者32017人の平均年齢は64.2歳と、透析患者の高齢化が伺われる。慢性腎不全の患者は体力が低下しても、週3回の通院透析を欠かすことが出来ない。そのため当院でも、加齢に伴う身体機能、特に移動能力の低下による通院困難から、入院を余儀なくされるケースが増加してきた。本研究の目的は維持期の高齢透析患者と非透析高齢者を比較することで、透析患者の身体機能の特徴を明らかにすることである。【対象】対象は、当院に外来通院透析中で、60歳以上の男性透析患者31名(以下透析群)と、東京厚生年金病院の「転倒予防教室」に自発的に参加した男性38名(以下非透析群)とした。平均年齢は、透析群で69.8歳(60歳から82歳)、非透析群で74.5歳(61歳から89歳)、透析群の平均透析期間は5.5年(0.4年から26.9年)であった。【方法】身体機能の評価として、生活体力の指標としての健脚度は10m全力歩行速度(以下、歩行速度)および歩数(以下歩数)、左右の最大一歩幅/下肢長(以下一歩幅)、40cm踏み台昇降(以下踏み台昇降)の可否、バランス能力の指標として左右の開眼単脚直立時間(以下直立時間)、形態計測として、体格指数(以下BMI)とウエスト・ヒップ囲(以下W/H比)を用いた。尚、統計処理には、Mann-Whitneyの U検定、Pearsonのカイ二乗検定(SSPSver.11)を用いた。【結果】歩行速度では透析群で8.1±2.3秒、非透析群で6.1±1.6秒で有意に非透析群が速かったが(p<0.01)、歩数は透析群で16±4.2歩、非透析群で15±2.4歩と差が認められなかった。左右の一歩幅は両側とも透析群で1.0±0.2、非透析群で1.3±0.2で有意差が認められた(p<0.01)。踏み台昇降の可否、直立時間、BMI、W/H比には差が認められなかった。【考察】透析群は、非透析群よりも低年齢であったにも関わらず、歩行速度や一歩幅で身体能力の低下が認められた。Painterらは透析患者の最大酸素摂取量は健常者と比較すると50%程度であると報告している。一方で、Kouidiらは、透析患者に対して長期間の継続的な有酸素運動を主体とした運動介入を行うことで、下肢の筋萎縮(特にTypeII線維)が有意に改善したと報告している。今回透析群では、腎不全の影響による透析導入前からの慢性的な運動不足状態、活動性の低下に起因する廃用性の身体機能の低下が推察された。人口の高齢化とともに、高齢透析患者は年々増加しており、身体能力の低下が危惧される。定期的な有酸素運動の継続を指導することで、透析患者の身体能力の維持に努めるとともに、今後とも身体機能の評価を実施し経過を追っていきたい。