抄録
【目的】 筋腱付着部障害は,若年競技者に度々発生するスポーツ障害のひとつである。発育期では,身体各部に成長・発達のアンバランスが生じ,スポーツ障害の発生要因の一因をなしていると考えられる。この成長・発達は,きわめて個人差が大きく,暦年齢のみでなく発達年齢を考慮することが重要であり,身長速度曲線の評価が有効である。本研究の目的は,中学生サッカー選手における筋腱付着部障害と身長速度曲線との関係を検討することである。【対象及び方法】 中学生サッカー部員80名(12-15歳)を対象とした。筋腱付着部障害の有無,小学校1年生から本調査学年時までの学校定期健康診断時の1年毎の身長の調査を行った。調査で得られた身長から年間の身長増加量を求め,SPSSの3次スプライン曲線を使用し,身長の成長速度曲線を作成した。身長速度曲線の区分は,村田の分類に準じてtake off ageからage of peak height velocity(以下PHA)までをphase2とし,PHAから最終身長年齢までをphase3とした。筋腱付着部障害と身長速度曲線のphaseとの関係について,カイ2乗検定を行った。【結果及び考察】 筋腱付着部障害のあるもの(以下A群)は13名であり,障害のないもの(以下B群)は67名であった。身長速度曲線の区分は,phase2が37名(A群3名,B群34名),phase3が43名(A群10名,B群33名)であった。筋腱付着部障害の有無と身長速度曲線のphaseとのカイ2乗検定の結果,有意差は認められなかったものの,A群はphase2よりもphase3に多く属していた。Osgood-Schlatter病の発症時期がphase2と一致すると報告されていることなどから,トレーニングにおいて通常phase2の時期に注意が必要であるといわれている。しかし,今回の調査ではphase3に筋腱付着部障害が多くみられ,異なる結果となった。今回は,筋腱付着部障害の発生時期を確認していないため,phase2の時期に筋腱付着部障害が発生しphase3まで障害が継続していたとも考えられる。このため,今後phase2の時期にいて筋腱付着部障害のなかった34名を経時的に調査していくことで,筋腱付着部障害の出現時期を確認する必要があると考えられる。