理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: BP115
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運動・神経生理
培養筋芽細胞への電気刺激効果
*宮下 崇弓削 類大久保 敦子元安 左矢加雲野 康紀浜本 しのぶ浦辺 幸夫
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キーワード: 筋芽細胞, 電気刺激, myogenin
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抄録
【はじめに】筋萎縮に対する電気刺激療法は,整形外科疾患,スポーツ理学療法等の臨床現場で一般に使用されている。しかし,この電気刺激療法の効果に関する細胞レベルでの研究報告は少ない。そこで本研究では,培養筋芽細胞に電気刺激を行い,筋芽細胞の分化の経時的変化を形態学的,分子生物学的に検討した。【材料と方法】培養細胞は,ラット骨格筋由来の筋芽細胞株L6を用い,正常培養した対照群と,電気刺激を行った電気刺激群の二群に分け,培養開始24時間後から3週後まで経時的に検討した。電気刺激条件は,矩形波,刺激頻度0.5 pulse /sec,持続時間2 msec,電圧50 V,刺激時間5 分/日行った。培養開始6日後でコンフルーエント(細胞が培養皿いっぱいに密になった状態)に達した時点(set 0)から,1,3,5,7日後に電気刺激を行い,その後は刺激を施行せず培養を行った。電気刺激による筋芽細胞の分化の程度を,形態学的観察,単位面積当たりの筋管細胞の発生数,western blot法によるmyogeninタンパク質の発現等を用いて解析した(培養開始1,3,5,7,10,12,14,18,21日後)。なお筋管細胞数の統計検定には,一元配置分散分析を用いた。【結果】(1) 形態学的変化:7日後以降,電気刺激群では,対照群よりも太い筋管細胞が認められた。さらに17日後では,電気刺激群でのみ筋管細胞の自動収縮が観察された。(2) 単位面積あたりの筋管細胞数:10日後(電気刺激後4日目)及び12日後(電気刺激後7日目)で,電気刺激群の筋管細胞数が増加した(P<0.02)。(3) western blot法:対照群では7日後にmyogeninの発現がピークに達し,その後は徐々に発現が弱まった。電気刺激群では,対照群と同様に7日後に発現のピークに達し,10日,12日後も強い発現を保ちその後減少した。【考察】myogeninの発現は,両群とも7日後にピークを迎え,電気刺激群では10日,12日後とその発現を維持していた。そして,培養開始10日後(電気刺激後4日目)と12日後(電気刺激後7日目)で電気刺激群の筋管細胞数が増加した。myogeninは,筋特異的転写調節因子であるMyoDファミリーの1つで,筋管細胞への分化を調整するタンパク質であり,外界からの電気刺激によってmyogeninの発現が活性化され,筋芽細胞から筋管細胞への分化が促進したものと考えられる。また,筋管細胞の成長過程においてmyogeninは,筋の機能を果たすために必要なタンパク質を合成蓄積していく役割の一端を担っており,その関与が示唆されているものに,リアノジン受容体やCa2+ ポンプなどの筋小胞体遺伝子の転写の調節,アセチルコリン受容体サブユニットの発現等がある。このような筋の機能性にもあずかるmyogeninの発現が増加したことで,本来ならば収縮の起こらないL6が収縮能を備えた筋管細胞へ分化した可能性が示された。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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