抄録
【はじめに】筆者ら1)の先行研究において6分力計(Pylon load cell;以下PLC)を足部の静的材料試験に応用して足部特性を比較すると足部のエネルギよりモーメントの大小が駆け足などの踏み切り性能を表していることが示唆された.本研究は静的材料試験から得られた足部モーメントと動的な歩行条件下での足部モーメントや関節パワーとの関係について比較検討を行ったので報告する.【対象・方法】被験足部は義足足部8種; 単軸足(Otto),Dynamic Plus 1D25(Otto),Flex Foot Walk II,Greissinger Plus,J-Foot4LS,J-Foot4LM,J-Foot4LH,SACH足(啓愛)である.静的足部特性評価には材料試験Instron1185を用い,義足パイロンに共和電業社製PLC,型式LSM-150KESA61を組み込み,斜度20度の床面に対して前足部と踵部に600Nまでの3回の増減荷重を加えて荷重・変位曲線から得られる足部エネルギに加えてPLCから得られる各力のデータから足関節周りに働く足部モーメントを算出した.動的足部特性評価としては健常男性1名(年齢28歳)に模擬義足でのトレッドミル歩行(時速2km/h)を行い上記足部を取り替えて立脚相における足部モーメント,パワー,足部角度変位を計測した.計測は上記PLCと電気角度計(1軸性ポテンショメータ;アニマ社製ホルタス-A1)からの足部モーメント,関節パワー,足部エネルギを算出した.比較項目として1)静的評価から得られた前足部荷重時の最大底屈モーメント(SAPM),踵部荷重時の足部背屈モーメント(SADM),2)動的評価から得られた踏切期に得られる足部最大底屈モーメント(DAPM),足部最大底屈パワー(DAPP)と踵接地期に得られる足部最大背屈モーメント(DADM),動的足部最大背屈パワー(DADP)を比較した.統計処理にはSPSS Ver.10.1を用いてピアソンの相関係数(r)を求め,p<.05を有意とした.【結果と考察】SAPMとDAPMとの間でr=.753,p<.05で,SAPMとDAPPでr=.813,p<.05で有意な相関を得た.またSADMとDADM,SADM とDADPの間には有意な相関は得られなかった.上記結果から静的試験から得られる足部底屈モーメントは動的歩行条件下での駆動力である足部底屈モーメントや足部最大底屈パワーを推察する有用な指標であると推察された.しかし,踵部の静的動的な足部特性の関係については未だ不明な点が残り今後の研究課題となった.1)原 和彦・他:6分力計を用いた義足足部の静的材料特性評価.理学療法学 29(6):218-224,2002