理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: MP749
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義肢・装具
対麻痺者における車いすシート角度と身体アライメント及び上肢リーチ範囲の関係
*杉山 真理塚越 和巳常見 恭子河合 俊宏
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抄録
【はじめに】対麻痺者にとって車いすは移動を確保するだけでなく、快適な座位を提供し二次的合併症を防ぐものでなくてはならない。本研究では対麻痺者において車いすシート角度と身体アライメントおよび上肢リーチ範囲の関係を検討し、報告する。【対象】男性対麻痺者2名、高位胸髄損傷者(Th3、以下H)、下位胸髄損傷者(Th8、以下L)。【方法】普通型車いす(QUICKIE2)とJ2クッション、J2バックを使用し、背もたれ角度は98度に一定のままで、シート角度を0度、5度、10度の3段階に変化させ、アライメント変化(頸部、体幹、骨盤)と上肢リーチ範囲を測定した。アライメントは身体に装着したマーカーを矢状面よりデジタルカメラで撮影し、画像解析ソフトを用いて計測した。リーチ範囲の測定にはVINE社製牽引式スピードメーター(VMS-300)を使用した。スピードメーターのワイヤーを被験者の指尖に取り付け、被験者はできるだけ大きく前方または上方に動かし、引き出されたワイヤーの長さをリーチ範囲とした。【結果】Hの頸部と体幹はシート角度0度の時が最も屈曲位であり、シート角度増大に伴い伸展の運動が生じた。骨盤はシート角度増大に伴い前傾した。リーチ範囲は前方、上方リーチともにシート角度の増大に伴い増大した。Lの頸部はほぼ一定であり、骨盤はシート角度の増大に伴い後傾した。体幹はシート角度を5度にすると屈曲の運動を生じたが、10度にすると伸展した。リーチ範囲はシート角度が増大するに従って減少する傾向があり、特にシート角度5度以上で著明であった。【考察】Hは座位バランスが不良であり、常に骨盤後傾位での座位となり重心も前方へ変位していた。シート角度をつけることによって、重心が後方へ移動し背もたれのサポートを受けることで、骨盤が前傾し体幹・頸部が伸展したと思われる。このような変化がリーチ範囲を増大させたと思われ、骨盤の前傾と体幹・頸部の伸展運動がリーチ範囲拡大の一因であると思われる。Lで頸部がほぼ一定であった事は、骨盤の後傾に伴う変化を体幹で代償し、頸部の位置を一定に保とうとする姿勢反射の現れと考える事もできる。リーチ範囲はシート角度の増大にともなって減少傾向にあり、シート角度10度になるとそれが顕著になるため骨盤の後傾はリーチ範囲を減少させる要因になっていると思われる。本研究の結果より骨盤が後傾しないシート角度が必要であり、Lレベルの対麻痺者ではシート角度5度以下の設定が望ましい。Hレベルの対麻痺者ではシート角度を小さくすると前方への不安定性を招きやすく骨盤後傾を誘発する危険性がある。背もたれをサポートとして使用することで骨盤の後傾を防ぐ可能性があると思われ、シート角度だけでなく、背もたれの形状、ランバーサポートの有無、さらにティルト角度の検討が必要であろう。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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