抄録
【はじめに】腰椎ベルトは、腰痛患者に対し腰痛の予防や治療を目的に着用していることが多い。一般的に腰椎ベルトは腰椎運動の制限、体幹筋筋活動量の減少、腹腔内圧の上昇、椎間板内圧の減少等と言われている。しかし統一された見解が得られていないのが現状である。我々は、第51回東日本整形災害外科学会において腰椎ベルト着用時の腰椎運動に着目し、ベルトの固定力や締め方の違いで床面に置いた鉛筆を拾う動作を検討した結果、腰椎ベルトの固定力や締め方の違いでは腰椎運動に影響を及ぼさない事が分かった。そこで今回は、鉛筆を拾う動作において腰椎ベルト着用が脊柱起立筋の筋活動に与える影響を検討した。【対象と方法】対象は、腰痛のない健常な大学生6名(男性2名、女性4名)で、年齢は20歳から21歳(平均20.2歳)身長は147.8cmから168cm(平均160cm)体重は46Kgから61Kg(平均53.5Kg)とした。方法は、腰椎ベルトはマックスベルトシリーズ(日本シグマックス会社製)を使用し、固定力の異なるE2・V2・meの3種類を使用しそれぞれを弱・中・強とした。ベルトは、それぞれ腰背部にステーが2本、また補助ベルトがありステーの強度等の違いで固定力が異なるものである。腰椎ベルトを絞める強さは、被験者が心地よいと感じる程度に設定した。測定動作は、立位から左下肢を30cm前方に出した肢位より床面に置いた鉛筆を右手で拾う動作とした。一連の動作時間は、7秒とし鉛筆を把持する時を4秒目とした。また、動作中足底は常時床面に接地し非把持側上肢は体側に保持したままとした。筋活動の測定は、L4レベルの左右の脊柱起立筋より表面電極を用いて得た。分析に用いた筋活動は、鉛筆を把持してから立位に至る間に得られた最大EMG(250ms)とした。ベルト着用時に得られた筋活動は、腰椎ベルト非着用時を基準として正規化した。データ処理は分散分析を用い有意水準は5%とした。【結果】腰椎ベルト非着用時の脊柱起立筋のEMGを100とした場合、弱は99%、中は101%、強は105%でありベルト固定力の増加に伴い筋活動も増加する傾向が見られた。しかし、統計処理の結果、固定力の異なる3つのベルトの間には筋活動の差は見られなかった。また、1名の被験者はベルトを着用する事で著明な筋活動の増加を示した。【考察】一般に腰椎ベルト着用は、体幹筋の筋活動の減少を招くとされている。本研究ではベルトが脊柱起立筋の筋活動に大きな影響を及ぼさなかった。これは、ベルトの固定性の弱い事が関与していると推測される。また1名の被験者が著明な筋活動の増加を示したのは動作パターンの違いからくるものと考えられる。今後、測定方法の検討を含め更に固定性の強い体幹装具での検討が必要であると考えられる。