理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: NO547
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測定・評価
MMT5に対するMMT3の割合について
肩関節屈曲・肩甲骨面挙上・外転および肘関節屈曲での検討
*津吹 桃子宇佐 英幸竹井 仁
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抄録

【はじめに】臨床では簡便に筋力を測定する方法として、筋力を6段階の順序尺度で表す、Danielsらの徒手筋力テスト(以下MMT)を用いる場合が多い。Ploeg VD(1984)らは、成人男性の背臥位での肘関節屈曲筋力をダイナモメーターで測定した結果、MMT3はMMT5の2から4%に相当すると報告している。今回我々は、Danielsらによる新・徒手筋力検査法の方法を用いて、肩関節屈曲・肩甲骨面挙上・外転および肘関節屈曲に関して、MMT5に対するMMT3の割合を分析したので報告する。【対象】対象は健常成人32名(男17、女15)の右利き手32肢。平均年齢は21.2(18-26)歳、身長と体重の平均値±標準偏差は166.3±8.9cm、61.3±12kgであった。【方法】椅子座位にて体幹をベルトで固定し、新・徒手筋力検査法に基づき、肩関節屈曲・肩甲骨面挙上・外転および肘関節屈曲の4種類の等尺性運動を実施した。肩関節測定では肩の挙上角度を90゜とし、肘関節測定では上腕を体側につけた肘関節90゜屈曲位とし、徒手筋力計(アニマ社製μTas MT-1)にて各最大抵抗力(以下P)を測定した。徒手筋力計の圧力センサーは、肩関節測定では上腕骨外側上顆の2cm近位部、肘関節測定では橈骨茎状突起の2cm近位部にあてがった。MMT3(以下M3)およびMMT5(以下M5)は以下の式にて算出した。結果は分散分析・多重比較・t検定で処理し、危険率5%未満を有意とした。【M3とM5の計算式】M3はDanielsらの定義に基づき、M3=K・g・k・L[N・m/kg]とした。ただし、K:質量比(肩関節測定時は男性0.0505・女性0.0445、肘関節測定時は男性0.024・女性0.019)、g:重力加速度、k:重心位置距離比(肩関節測定時は0.46、肘関節測定時は0.48)、L:アーム長(肩関節測定時は肩峰から第3指尖端、肘関節測定時は肘関節裂隙から第3指尖端)。また、最大筋力はM5=M3+P・l/W[N・m/kg](l:肩関節測定時は肩峰から測定部間距離、肘関節測定時は肘関節裂隙から測定部間距離。W:体重)とした。【結果と考察】各測定項目で男女間にt検定で有意差を認めなかったため、全員にて各測定項目間の多重比較検定を行った。肩関節における3種類の運動それぞれのM3/M5間に有意差はなく、これら全体のM5の平均値は0.76 [N・m/kg]、M3の平均値は0.16[N・m/kg]で、M3の割合は約21.1%となった。今回の結果から、肩関節においては3種類の挙上方向に関係なく、M5に対するM3の割合は一定であることが確認できた。肘関節屈曲ではM5の平均値は0.78[N・m/kg]、M3の平均値は0.04[N・m/kg]で、M3の割合は約5.6%となり、Ploeg VDらよりは若干高い割合となったが、これは測定方法と使用機器の違いが原因と考える。M3は上記の式により、アーム長が分かれば求められるため、体重を考慮して単位を[N・m]にすることで、簡便に個人のM5を予測することができ、臨床上の筋力増強運動における目標設定に使用できると考える。しかし、身体の各部分ではM5に対するM3の割合が異なることも推測されるため、今後他の関節での検討も必要となる。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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