理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: BP120
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運動・神経生理
筋力増強を目的とする高強度等尺性反復運動時の問題
大腿四頭筋局所における血液量と脱酸素化の動態からの解析
*宅間 豊嶋田 智明宮本 謙三井上 佳和宮本 祥子竹林 秀晃岡部 孝生瀬戸 勝男東川 裕
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抄録

【目的】臨床で筋力増強運動として利用することの多い等尺性運動を高強度負荷で反復させる際の問題を明らかにすることを目的として,大腿四頭筋局所の血液量と脱酸素化の動態および筋疲労を解析し検討を行った。【方法】1)被験者は近赤外分光法の皮下脂肪厚より受ける影響を考慮して,BMIが24.0 Kg/m2未満の健常人男性14名とした。なお,事前に研究の目的や方法などについての説明を十分に行い同意を得た。2)等尺性運動は等速性運動機器に腰掛けさせ,右膝60度屈曲位における大腿四頭筋の等尺性最大収縮努力を収縮6秒と弛緩6秒を1セットとして連続10セット反復させた。3)大腿四頭筋の中でもtype1 線維が最も豊富で酸化能力の高い内側広筋を選択した。この筋の血液量と脱酸素化の指標として,近赤外分光装置を用いて総ヘモグロビン量(total-Hb),酸素化ヘモグロビン量(oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン量(deoxy-Hb)を測定した。これらのヘモグロビンの代表値は,各セットにおけるtotal-Hbとoxy-Hbの弛緩期最高値と収縮期最低値およびdeoxy-Hbの収縮期最高値と弛緩期最低値とした。そして,これらのヘモグロビンの各セットにおける最高値から最低値までの変動幅も求めた。動態解析として,各ヘモグロビンの最高値,最低値,変動幅それぞれで運動前後半各5セットの平均値を算出した。その上で各ヘモグロビンについて,運動前後半それぞれで最高値と最低値の比較,変動幅の運動前後半の間での比較,最高値と最低値それぞれの運動前安静,運動前半,運動後半の間での比較を行った。4)内側広筋疲労の指標として中間パワー周波数(MDF)を運動初期,5セット目,10セット目において求め比較した。5)大腿四頭筋全体の乳酸産生レベルと筋疲労の指標として血中乳酸濃度を運動前安静,運動後1分・3分・6分において測定し比較した。【結果および考察】筋収縮期には血液量の有意な減少を伴った有意な脱酸素化が認められ,筋弛緩期にはそれを回復させるような血液量の有意な増加がみられた。運動前後半それぞれ最後のセットにおけるMDFは運動初期に対して有意な低下を示し,運動後の全ての血中乳酸濃度は運動前安静に対して有意に上昇した。筋弛緩期にみられた血液量増加の反応は活動筋において生じる機械性および代謝性の筋血流量調節の相乗効果によるものと推察された。しかし,その筋血流量調節は脱酸素化が運動前安静レベルに回復しなかったことや脱酸素化が一因となって筋疲労を認めたことから充分ではなかったと思われた。以上の結果より,筋力増強を目的に高強度の等尺性運動を反復させる際には,適用する収縮強度に応じた筋の収縮時間と弛緩時間の適切な配分を検討することが必要であり,今後の課題であると思われた。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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