抄録
【目的】反復起立運動を用いて若い成人男女の換気性作業閾値を測定するために我々が考案した運動負荷法(昨年報告)において、汎用性の高い運動負荷法と同じく、酸素摂取量と心拍数(HR)が運動中に直線的に増加するか、酸素摂取量とHRが直線的関係にあるかについて検討する。
【方法】健康な大学生36名(男性17名;24.6±4.3歳、女性21名;22.0±2.9歳)を対象に、以下の8stageからなるプロトコルで反復起立運動を行わせ、運動中の呼気ガスと心拍数を呼気ガス分析器K4b2(Cosmed社製)で測定した。
○男性用プロトコル:高さ調節可能な台で反復起立運動を行う。台の高さを身長の30%から15%まで毎分2.5%ずつ減ずる(第1から第7stage)。第8stageの台の高さは第7 stageと同じ身長の15%。運動のテンポは第1から第7stageで毎分25回、第8stageで毎分30回。所要時間は8分。
○女性用プロトコル:使用する台、台の高さの設定、所要時間は男性用プロトコルと同じ。運動のテンポは第1から第7stageが毎分20回,第8stageが毎分25回。なお、男女とも第1stageはウォーミングアップとして設定した。
対象者ごとに第1stageおよび他のstageと運動のテンポが異なる第8stageを除く第2から第7stageの酸素摂取量と HRを5秒間隔の平均値で表し、運動時間と酸素摂取量およびHRとの標準回帰係数を男女別に求めた(独立変数;運動時間、従属変数;酸素摂取量・HR)。また、酸素摂取量とHRとの標準回帰係数(独立変数;酸素摂取量、従属変数;HR)も男女別に求めた。そして、SPSS10.1を用いて標準回帰係数の有意性を検定(有意水準1%)し、95%信頼区間を求めた。
【結果】運動時間と酸素摂取量の標準回帰係数の平均値 (95%信頼区間)は男性で0.9704(p<0.01、0.9517から 0.9890)、女性で0.9489(p<0.01、0.9376から0.9601)、運動時間とHRとの標準回帰係数は男性で0.9118(p<0.01、0.8905から0.9331)、女性で0.9680(p<0.01、0.9537から0.9823)であった。酸素摂取量とHRの標準回帰係数の平均値(95%信頼区間)は男性で0.8881(p<0.01、0.8498から0.9264)、女性で0.9315(p<0.01、0.9194から0.9436)であった。
【考察】運動負荷試験では、運動強度を強めることによって酸素摂取量とHRが直線的に増加する。しかし、我々が考案した反復起立運動による運動負荷法では運動強度を仕事率として表すことができないため、今回、運動時間と酸素摂取量およびHRの関係に着目した。その結果、酸素摂取量とHRは、他の汎用性の高い運動負荷法で認められているように、運動中の時間経過と共に直線的に増加していた。また、酸素摂取量とHRの標準回帰係数が統計学的に有意であったことから、両者が直線的関係にあり、一方の値をもとに他方を予測することができることも証明された。