理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: NO550
会議情報

測定・評価
痴呆高齢者における転倒の危険因子
*太田 雅人島田 裕之矢部 規行
著者情報
キーワード: 転倒, 痴呆, 高齢者
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】施設入所高齢者の多くが痴呆を有し、頻回に転倒している。痴呆症の主な症状は、知的機能の低下、問題行動であり、これらが転倒の危険を高め、転倒予防のための介入を困難にしている。施設ケアにおいて転倒は寝たきりや要介護状態を悪化させる主要因であるため、その予防方策の確立は急務の課題である。本研究では、施設に入所している痴呆高齢者を対象として知的機能、身体機能、行動分析の評価を行い、転倒と関連する要因を検討した。【方法】対象はMini-Mental State Examinationの得点が15点以下の著明な痴呆者であり、平成14年3月から平成14年8月までの6ヶ月間に介護老人保健施設に継続して入所していた49名(男性8名、女性41名、平均年齢85.6±8.4歳)とした。検査項目は身体機能検査として、握力検査、立ち上がり検査、片足立ち保持検査、Performance Oriented Mobility Assessmentを行った。握力検査は左右各2回ずつ計測し、4回の平均値を求めた。立ち上がり検査は、30秒間に出来るだけ速く椅子から立ち上がった回数を測定した。片足立ち保持検査は左右各2回ずつ計測して計4回の平均値を求めた。Performance Oriented Mobility Assessmentは立位や歩行時の安定性を定性的に得点化した。知的機能検査は、Mini-Mental State ExaminationとGBS scale を測定した。GBS scaleは24項目の日常行動を観察し、7段階に得点化した。下位項目には運動機能、知的機能、感情機能、その他の症状が含まれる。ADL評価は、Functional Independence Measureを用いた。この指標は日常生活に必要とされる運動と認知項目により構成されている。行動分析には転倒関連行動指標を用いた。この指標は、施設入所者の過去1年間の転倒状況の観察から、転倒に関連した19項目の行動を抽出して作成した。得点化は、行動しない、または介助の場合を0点、行動するが安全に行える場合を1点、行動して転倒の危険がある場合を2点とした。分析は、6ヶ月間に2回以上転倒した者を転倒群、1回未満の者を非転倒群とし、Mann-Whitney検定を用いて群間の比較を行った。また、調査期間中の転倒の有無を従属変数とし、有意差の認められた項目を独立変数としたロジスティック回帰分析を行った。【結果】転倒群と非転倒群間で検査項目を比較した結果、転倒関連行動指標の合計点、および転倒の危険がある行動(2点であった行動)の個数において有意差が認められた。ロジスティック回帰分析の結果、合計点が1点増えるごとに転倒の危険度が1.2倍増え (95%信頼区間 1.1-1.4, p=0.005)、転倒の危険がある行動の個数が1個増えるごとに、転倒の危険度が2.1倍増える結果となった(95%信頼区間 1.3-3.3, p=0.002)。また、転倒の危険がある行動の個数が3個以上ある者は全例が転倒していた。【結論】痴呆を有する高齢者に関しては、転倒関連行動指標が転倒者のスクリーニングのために有効であると考えられた。特に、転倒の危険がある行動の個数が3個以上ある者は非常に転倒しやすいため、十分な注意が必要である。
著者関連情報
© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top