抄録
【はじめに】現在、脳卒中片麻痺患者(以下方麻痺患者)の転倒因子について様々な研究が行われておりリハビリテーションを進める上でも転倒防止についての対策が急務とされる。片麻痺患者の転倒の原因については、身体機能に加え精神機能・住宅環境・装具の適合性等の要因が考えられている。今回片麻痺患者の転倒実態を把握するためアンケートによる調査を行った。さらに無拘束加速度計側装置および足部圧計測装置を用い、立ち上がり動作において評価を行い転倒因子について検討した。【対象と方法】調査1として当院通所リハビリテーション施設に通所する46名を対象に聞き取りによるアンケート調査を実施した。アンケート項目は転倒経験の有無と場所、転倒時の動作、不安に思うこと等とし、転倒の発生する場所および動作について検討した。調査2として当院通院中の片麻痺患者5名、比較対照群として健常者1名を対象に、プラットホームからの立ち上がり動作を行わせ加速度および足圧センサ(F-SCANニッタ株式会社)にて計測評価を行った。加速度センサは頭部および腰部に、圧力センサは足定部に装着し検討をおこなった。なお本研究は当院倫理委員会の承認を得て全ての対象のインフォームドコンセントが得られた後実施した。【結果および考察】調査1より対象者の50%は転倒の経験があると答えていた。また、転倒の経験があるものは杖、装具を利用している者が多く機能障害による影響が大きいものと思われた。転倒場所において屋内では、居間・寝室が多く居間においては日中最も長い時間過ごす場所であること、寝室は夜間や朝の動作開始時にバランスを崩しやすく、これが転倒に影響したものと考えられた。転倒時の状況は、立ち上がりから歩き始めが最も多く動作開始時に転倒のリスクがあることを示しており転倒を検討する上で重要な動作のひとつであることが示唆された。調査2より片麻痺患者において頭部の加速度は、前後・左右の変化量が小さい傾向にあった。また、重心の中心である腰部においても同様に変化量が少ない状況であった。これらの結果より姿勢制御において不安定な片麻痺患者は動作をゆっくりと遂行しているためと思われた。足底面の荷重圧において健常者では動作にかかる時間が短く、左右の荷重値が均等であった。片麻痺患者においては、荷重圧が均等でなく健側優位の動作が遂行されていることが観察された。このことは、少ない支持基底面の中で動作が行われていることを示しておりバランスを崩す可能性が高い動作であると思われた。今回アンケート調査を行い転倒の発生状況が明らかになった。さらにアンケート調査より転倒の発生頻度の高い立ち上がり動作において加速度計、足圧計より特徴的な波形を観察できた。今後リハビリテーションを行う上でひとつの指標になると示唆された。