抄録
【はじめに】片麻痺患者の立位・歩行において短下肢装具を用いる場合が多く、その材質としてはポリプロピレンが主流である。一方、日本の居住環境では床面の材質において畳・フローリング、施設ではリノリューム製の床面を多用している。通常在宅では異なる床面での歩行を行うため、床面の材質の違いにより歩行への影響や転倒を起こす原因のひとつと考えられる。そこで今回、床面材質の違いによる装具歩行の関連性について足圧分布測定システムを用いて評価を行ったので報告する。【対象】対象は、当院外来通院・入院中の脳卒中片麻痺患者でプラスチック製短下肢装具を使用している10例で、平均年齢56±10.2歳、平均罹患期間23.6±17.95ヶ月であった。なお、本研究は当院倫理委員会の承認を得て、すべての実験は対象者のインフォームドコンセントが得られた後実施した。【方法】測定は足圧センサ(F-SCANニッタ株式会社)を用い、足型センサーシートをプラスチック製短下肢装具の底面に固定し異なる床面を歩行させた。床面材質としてフローリング・リノリューム・畳の3種類を選択した。解析は接触面積・接触圧力(荷重値の総合計を接地面積で割った値kg/cm2)から、安定した歩行周期を抽出後AD変換(サンプリング周波数:166.6Hz)し、パーソナルコンピュータにデータ保存した。得られたデータから麻痺側・非麻痺側の平均・標準偏差を算出し3種類の床面間での一元配置分散分析を行った。【結果】接触面積・接触圧力の結果で非麻痺側に床面間での有意差はなかった。麻痺側において接触面積はフローリング18.63±5.85cm2、リノリューム16.4±5.16cm2、畳39.66±9.68cm2であった。畳とフローリング・畳とリノリュームの間に有意差(p<0.01)を認めた。接触圧力ではフローリング3.8±1.47kg/cm2、リノリューム4.52±2.06 kg/cm2、畳1.72±0.4 kg/cm2であった。畳とフローリング・畳とリノリューム(p<0.01)の間に有意差を認めた。今回の結果では畳が広い接触面積・低い接触圧力をフローリング・リノリュームが狭い接触面積・高い接触圧力を示した。【考察】今回選択した材質の中で畳は硬度が低く装具歩行において緩衝作用があり左右均等でスムースな体重移動が行われ安定した歩行と考えられる。フローリング・リノリュームにおける歩行では、硬度があり、装具との反発力も生じ、十分な足底面の接地が得られにくいと考えた。そのため荷重の分配が不十分で非麻痺側荷重優位の不安定な歩行であると考えられた。今回床面材質の違いによる装具歩行との関連性について検討を行った。床面の材質により装具歩行に影響があることが示唆され、今後床面材質および装具の材質について考慮する必要があると考えられた。