理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: NP188
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測定・評価
肩関節の加齢変化について
胸椎後弯、肩甲骨アライメントに着目して
*有馬 弓美子藤田 博史大津 陽子川井 謙太朗佐藤 信一宮野 佐年
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抄録
【はじめに】我々は昨年度より40から50歳代を対象に肩関節の加齢変化について調べてきた。前回の実験では、肩甲帯も含めた肩関節の関節可動域と筋力を比較し肩甲胸郭関節にも差が認められた。今回はアライメントに着目し、胸椎後弯・肩甲骨の位置の加齢変化について考察したので報告する。【対象】肩関節に既往のない40から50歳代(平均48.8±5.2歳)の健常男性11名(以下中年群)、またコントロール群として20歳代(平均26.2±2.2歳)の健常男性8名(以下若年群)を対象とした。【方法】(株)新潟精機社製型取りゲージを用い、坐位にて両上肢下垂位(以下下垂位)と両上肢挙上位(以下挙上位)の2種類の姿勢におけるC7からL1の棘突起の弯曲を紙面上にトレースした。その際C7・L1の棘突起をポイントしC7とL1を結んだ直線をL〔cm〕、直線Lからトレースした曲線の頂点までの距離H〔cm〕とし、その割合(H/L×100〔%〕)を円背指数として計算した。下垂位、挙上位、その差(以下変化量)における値を中年群と若年群で比較した。また、両上肢下垂位での安静坐位における肩甲骨の位置として、肩甲棘の延長線上にある肩甲骨内側縁・肩甲骨下角の2点と脊柱との距離を計測した(それぞれS〔cm〕、A〔cm〕)。胸郭の大きさの指標として肩甲骨下角の高さでの胸郭の幅(W〔cm〕)も計測し、肩甲棘の延長線上にある肩甲骨内側縁までの位置(以下内側縁)をS/W×100、下角までの位置(以下下角)A/W×100として計算し比較した。検定方法は、Mann-WhittnyのU検定を使用した。【結果と考察】胸椎の円背係数については、中年群:若年群で下垂位では9.2±1.7:8.1±1.4、挙上位では7.0±1.9:5.8±2.3、変化量は2.2±1.4:2.3±1.8とどの値も有意差は認められなかった。坐位での上肢下垂位の胸椎後弯角や上肢挙上における胸椎後弯角変化量は加齢と関係がないという結果となった。肩甲骨の位置については、中年群:若年群で内側縁は50.6±5.8:56.3±4.0、下角は75.8±5.3:75.0±7.8となり内側縁の位置に有意差が認められた。中年群の内側縁が有意に内側に位置しており下角に差が認められなかったことより中年群は肩甲骨が内転・上方回旋した位置にあると考えられる。その方向は僧帽筋下部線維の走行と一致している。前回の実験においても筋力低下がもっとも多くみられた筋でもあり、加齢に伴い機能障害をきたしやすい筋の一つであるかもしれないと考えた。また、上肢下垂位での肩甲骨のアライメントが変化したことより肩甲上腕関節の関節窩の向きが変化し上肢挙上運動、特に運動開始時における肩甲上腕リズムにも影響を与えることが考えられる。今後、動的なアライメントも評価し運動に与える影響についても調べていきたい。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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