理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: NP187
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測定・評価
乳癌術後における肩関節可動域と皮膚表面温度の経時的変化
*川崎 桂子高橋 友明畑 幸彦青木 幹昌唐澤 達典立本 健二木村 貞治
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抄録
【はじめに】乳房切除術後に肩関節の可動域制限を高頻度に合併することはよく知られている.手術侵襲をうけた軟部組織やその周囲組織の炎症によって上肢挙上時のヒキツレ感や伸張痛を生じ,結果として肩関節の可動域を制限していると考えられる.しかし,乳房切除術後における創部周囲の炎症の程度と肩関節可動域の関連性に関する報告はほとんどない.今回われわれは,術後の肩関節屈曲角度と術創部周囲の炎症状態の皮膚温度を測定し,両者の関連性について検討したので報告する.【対象】当院において乳癌に対して非定型的乳房切除術を施行された患者17例17肩を対象とした,術側は,右側6肩・左側11肩で,検査時年齢は平均54.8歳(34歳から84歳)で,すべて女性であった. 【方法】まず,背臥位・両膝屈曲位で,肩関節の自動屈曲角度を計測した.次に,両側前胸部の皮膚表面温度をサーモグラフィー(富士通特機システム社製,インフラアイ2000)を使用して,術創を含む一定の範囲で,計測環境は日本サーモロジー学会の基準に準じて計測した.計測は,術前と術後2週・4週・8週・12週で,1名の理学療法士が理学療法施行前に実施した.各測定段階における肩関節屈曲角度と皮膚表面温度の経時的変化の有意差検定,および両者の相関係数を求めた.なお,検定の有意水準は5%未満とした.【結果】肩関節の屈曲角度は,術後2週で最も制限され,その後徐々に改善する傾向を示した.しかし,術後12週でも屈曲角度は術前より有意に小さかった(p<0.05).術側の皮膚表面温度は,術後すべての時期の温度が術前より有意に高かった(p<0.05).肩関節屈曲角度と皮膚表面温度の間に,術後2週目においてのみ負の相関関係が認められた(r=0.52).【考察】今回の結果より,肩関節の屈曲角度は術後12週で術前の約95%まで回復していたが,術前の屈曲角度にまでは戻ってはいなかった.次に,創部周囲の皮膚表面温度は,術後12週の時点でも術前より有意に高かった.これは,乳房切除術によって脂肪組織が切除されたためにより皮膚表面温度が上昇しているものと考えた.また,術後2週での肩関節屈曲角度と皮膚表面温度の間に有意な負の相関が認められたことより,術後初期においては,術創部の炎症症状が強い症例ほど肩関節屈曲角度が制限されることが分かった.これは上肢挙上時に炎症によってヒキツレ感や伸張痛を生じるために起こると推察された.今回の研究は肩関節の屈曲角度と皮膚表面温度の関連性を裏付けるものであると思われた.今後,さらに経過を追って測定を行っていくとともに症例数を増やし,サーモグラフィーによる皮膚表面温度の評価が乳房切除術後の回復状況を評価する一つの手段として有用であるのではないかについても検討していきたいと考えている.
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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