抄録
【はじめに】我々はこれまでに、一軸不安定板を用いて検査結果を得点化した足部関節覚検査法が、客観的・定量的であり、臨床応用できる可能性があることを報告している。宮本らは、足部による地面の水平性の認知は、歩行の際の重要な知覚要素であると述べている。今回、足部の水平認知に着目し、健常高齢者における水平認知の誤りが足部関節覚検査法の結果に与える影響について検討した。【対象と方法】対象は、健常高齢者20名(66.2±2.2歳、男性7名・女性13名)であった。検査肢位は股・膝関節90°、足関節0°、両上肢を胸部前面で交差させた坐位とした。全ての検査は閉眼にて行った。水平認知検査は一軸不安定板を用い、被験者に不安定板を内がえし・外がえし中間位にて水平保持するように指示を与えた。その時の保持位置を水平計を用いて評価し、被験者を内がえし群、水平群、外がえし群の3群に分類した。足部関節覚検査には、一軸不安定板と高さの異なる木片4つを用いた。不安定板の内・外側に木片を配置し、他動及び自動による足部内がえし・外がえしにて木片が高いと感じた側を口頭にて解答させた。正答・誤答の教示は与えず、試技はランダムに40回施行し、同一検者にて全ての検査を行った。誤答の型は、外側配置の木片が低い時にのみ誤答する場合を内がえし型、全問正答を水平型、内側配置の木片が低い時にのみ誤答する場合を外がえし型とした。水平認知検査によって分類された群ごとに全問正答人数と、それぞれの誤答の型の人数を算出した。統計学的処理は、FisherのExact検定を用いた。【結果】水平認知によって分類された内がえし群は13名、水平群は5名、外がえし群は2名であった。そのうち全問正答人数はそれぞれの群で各1名、4名、0名であった。水平群の全問正答率は内がえし・外がえし群に比べ有意に高く、かつ内がえし・外がえし群の誤答率は水平群より有意に高かった(p<0.05)。また、水平認知の誤りが足部関節覚検査法の結果に与える影響は、内がえし群の76.9%が内がえし型、水平群の80.0%が水平型、外がえし群の100%が外がえし型であり、群ごとに誤答の型が決まる傾向が示唆された。【考察】今回の結果から、健常高齢者において水平認知が正しいものは、足部関節覚検査の正答率が高いということが明らかになった。また、水平認知検査の誤りと足部関節覚検査の結果の間には、一定のパターンが認められる傾向にあることが示唆された。この要因として、正確な角度差を抽出するための基準が誤っていることが考えられた。今回の検査中には、正答・誤答の教示を与えなかったが、このような一軸不安定板と木片を用いた足部関節覚検査を関節覚再教育方法として臨床に応用する場合には、視覚や口頭による結果の知識を与えることによって誤った基準を適正化させることができるのではないだろうか。