理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: NP194
会議情報

測定・評価
仕事率の変化がペダリング動作における下肢筋の筋活動に及ぼす影響
トレッドミル歩行とスクワット動作との比較
*岩下 篤司市橋 則明池添 冬芽大畑 光司
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】我々はこれまで、ペダリング動作における負荷量や回転数の変化が筋活動量に及ぼす影響を検討してきた。しかし、歩行およびスクワット動作と、ペダリング動作において仕事率を変化させた場合との比較は未解明であった。本研究では、仕事率を変化させてペダリング動作を行ったときの下肢筋の筋活動を測定し、トレッドミル歩行およびスクワットにおける筋活動と比較・検討を行った。【対象と方法】対象は健常成人9名(年齢21.8±2.1歳、身長164±9.3cm、体重54.3±7.0kg)とした。筋電図の測定筋は右側の大腿直筋、内側広筋斜頭、外側広筋、半膜様筋、大腿二頭筋長頭、腓腹筋内側頭、腓腹筋外側頭、前脛骨筋の8筋とした。表面筋電図を用い双極導出し、整流平滑化筋電図(Rectified Filtered electromyography:以下RFEMG)を求めた。自転車エルゴメーターのサドルの高さは、下死点にて膝屈曲30度に設定した。仕事率は60W(1.0kp×60rpm)、120W(2.0kp×60rpm)、180W(3.0kp×60rpm)とし、ペダリング動作を行ったときの平均RFEMGを測定し、5周期分の筋活動量をデータとして用いた。歩行動作はトレッドミルにて4km/h、6km/hで歩行したときの平均RFEMGを測定し、5周期分の筋活動量をデータとして用いた。スクワット動作は膝屈曲角度を0゜から90゜の範囲で、屈伸反復速度60回/分で行ったときの平均RFEMGを測定し、5周期分の筋活動量をデータとして用いた。筋電図データは、各筋の最大等尺性収縮時の筋活動を100%として正規化した。統計処理には反復測定一元配置分散分析及び、Fisher’sPLSDの多重比較を用いて、仕事率を変化させたときのペダリング動作と歩行動作、およびスクワット動作との違いを分析した。【結果及び考察】大腿四頭筋のペダリング動作における%RFEMGは60Wでは9.9%から14.7%、120Wでは17.4%から25.8%、180Wでは22.4%から32.8%であった。ペダリング動作と比較すると、スクワット動作の%RFEMGは180Wと同じ程度の値であり、またトレッドミル歩行の6km/hは60Wと同じ程度の値であった。ハムストリングスのペダリング動作における%RFEMGは60W では12.9%から13.6%、120Wでは18.0%から19.9%、180Wでは22.2%から26.3%であった。ペダリング動作と比較すると、スクワット動作、およびトレッドミル歩行における6km/hの%RFEMGは、120Wと同じ程度の値であった。下腿筋のペダリング動作における%RFEMGは60Wでは7.6%から16.6%、120Wでは11.1%から21.9%、180Wでは17.2%から26.9%であった。ペダリング動作と比較すると、スクワット動作の%RFEMGは120Wと同じ程度の値であり、トレッドミル歩行の6km/hは180Wよりも高い値となった。今回の結果より、大腿四頭筋において、ペダリング動作やスクワット動作は、歩行よりも筋活動量を高めるのに有効であり、ハムストリングスでは高い仕事率でのペダリング動作が最も筋活動を高くするのに有効であった。しかし、下腿筋はペダリング動作やスクワット動作よりも、歩行時に最も高く活動することが示唆された。

著者関連情報
© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top