抄録
【目的】我々はこれまでに、高齢者用バランスボード(以下、BN)を使ったバランス機能評価と、従来のバランスおよび運動機能評価、過去の転倒発生との関連について報告した。今回は、バランス機能評価法および運動能力の評価が、将来の転倒発生と関連があるかどうかについて前方視的な検討を行なった。【対象と方法】2000年8月-9月に初回調査を行なった老人保健施設及びデイケア目的で当院を定期的に訪れる高齢者174名中、日常生活自立度判定基準(厚生省)でA1からJ2ランクであり、また中枢性障害や運動器系に明らかな疾患のない94名であった。このうち、2002年8月-9月までの追跡調査において脱落や死亡を除き、調査後1年間の転倒発生について調査可能であった45名(男性11名、女性34名)、平均年齢は、81.2才(標準偏差6.4)を対象とした。初回調査項目は、高齢者用バランスボード(以下、BN)によるバランス機能評価(直径35cm、床面からの高さ4.5cm、7cm、10cmの3種類を用い、開眼両足立ちにて実施した。評価基準は、姿勢を維持できた時間によって、Grade I:10cmで30秒以上維持可能、Grade II:7cm で30秒以上可能、Grade III:4.5cm で30秒以上可能、Grade IV:4.5cm で30秒の維持不可能の4段階に分類)、Berg Balance Scale( BBS)、Functional Reach Test( FRT)、Timed Up & Go Test( TUG)、歩行レベル、10m歩行速度(自由と最大)、1分間起立回数(1MSD)であった。その後の転倒歴は定期的な問診、およびカルテから調査した。統計解析は、1)BNグレードと転倒の有無につてのχ2検定、2)各変数について転倒有無による2群間の差の検定(Mann-WhitneyのU検定)、3)転倒の既往の有無を従属変数、年齢、性、BMIおよびBNグレード、歩行速度、BBS、歩行レベル、1MSTを説明変数としたロジスティック回帰分析、を行った。【結果】1)転倒有りは45人中15人で、BNグレードGrade Iで1人、Grade IIで0人、Grade IIIで8人、Grade IVで6人であった。χ2検定の結果、BNグレードと転倒の有無には有意な関連があった(尤度比9.23、p=0.03)。2)転倒有り群が無し群に比べて、BBSおよび10m歩行速度(自由と最大)で低値であったが、他の項目には差はなかった。3)ロジスティック回帰分析の結果、BMIの低値、BNグレードの低グレード、BBSの低値が転倒のリスクと有意な関連があった。【結語】BNによる高齢者のバランス機能評価は、前方視的な転倒リスクとも関連があり、BNは転倒ハイリスク者のスクリーニングとして活用できるように思われた。