理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: NP627
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測定・評価
高齢者のバランス能力測定法に関する検討
各測定法の関連性と有用性の分析
*宮地 靖予小嶋 裕田岡 健山下 満衣子宇都宮 博史宇都宮 秀昭
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抄録
【はじめに】高齢者のバランス能力は,移動能力や日常生活活動(以下,ADL)及び転倒などと関連しており,臨床の場では種々の測定法が用いられている。本研究の目的は,諸評価のなかで重心動揺計による測定,Berg Balance Scale(以下,BBS),Timed Up & Go Test(以下,TUG)を取り上げ,高齢者のADL,転倒及び各評価法の関連性などを分析し,高齢者のバランス評価として使用される頻度が多くなっているBBSとTUGの有用性を検討することである。【対象と方法】対象は当院で理学療法を受けている42名(介助なしでの立位可能者)である。性別は男性19名,女性23名,平均年齢は75.9±9.2歳,疾患は脳血管障害12名,その他30名(以下,CVA群,非CVA群)である。過去1年間の転倒経験は「有」23名,「無」19名である。バランス能力評価は,重心動揺計(アニマ社製,GS-11E),BBS,TUGを用いた。また,ADL評価はFIMを用いた。なお,統計処理は,t検定,χ2検定及びSpearmanの順位相関を用いた。【結果】(1)各評価測定値:重心動揺測定は総軌跡長開眼(閉眼)87.6±43.1cm(114.9±56.8cm),矩形面積開眼(閉眼)17.9±13.4cm2(22.7±14.4cm2)であった。BBSは44.8±13.1点,TUGは19.7±10.2秒,FIMは114.3±13.1点であった。(2)基本属性と各評価との関連:性別,年齢(74歳以下・75歳以上),転倒(有・無)では有意差は認めなかった。疾患では,CVA群はBBS(p<0.01),FIM (p<0.05)は有意に低く,TUG(p<0.01)は有意に長かったが,転倒では有意差を認めなかった。(3)各評価間の関連:BBS・TUG・FIMの各間では相関(γs=0.600から0.800,p<0.01)を認めたが,重心動揺測定間では相関を認めなかった。【考察】高齢者の移動能力やADLの自立度や転倒とBBSの関連性については諸家の報告がみられる。今回の結果でもBBS・TUG・FIMの関連性が明らかとなった。転倒での各評価で有意差を認めなかったのは,対象者の多くが長期入院者で生活範囲が狭いという共通した特性がみられ,単純に過去1年間の転倒の有無という指標では差が現れにくかったものと考える。重心動揺測定では,基本属性との関連,各評価との関連が認められなかったが,この点は報告者による相違がみられる。バランス能力評価では,機能的な「動的バランス」評価も併せて実施する必要があることから,ADL能力も把握され易く,より簡便な測定法であるBBSとTUGは有用な評価法であると考える。しかし,転倒との関連性は諸家の報告でも一致しておらず,対象者の特性に影響を受ける可能性が推測され,今後は多要因からの検討が課題である。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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