理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: NP726
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測定・評価
ハンドヘルドダイナモメーターによる等尺性膝伸展筋力の測定
座位姿勢が測定値に及ぼす影響
*原田 憲二加藤 宗規中島 活弥高橋 輝雄
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抄録

【はじめに】前々回の学会において、加藤らは固定用ベルトを装着したハンドヘルドダイナモメーター(以下HHD)による等尺性膝伸展筋力測定の良好な再現性について報告した。また、前回の学会において、栗山らは同測定におけるマットプラットホーム、ベッド、車椅子、パイプ椅子上での座位間の再現性について報告している。本研究では、等尺性膝伸展筋力測定における座位姿勢の違いが測定値に与える影響について検討したので報告する。【対象と方法】対象は、膝関節の疼痛や整形外科的疾患を有しない健常者37名(男性20名、女性17名)、年齢21±1歳、身長166.5±9.0cm、体重57.8±8.0kgの一側下肢、37脚である。対象者には本研究の目的、内容を説明し、同意を得たのちに測定を行った。HHDは固定用ベルトを装着したアニマ社製徒手筋力測定器μTas MF-01を使用した。膝伸展筋力の測定は、マットプラットホーム上端座位にて、体幹が垂直位の状態で両腕を胸の前で組む(腕組み)、台の前縁を両手で掴む(縁掴み)、体幹を垂直位から45度後方へ傾けた状態で両手を体の後ろに伸ばし台上に置いて体幹を支える(傾斜)の3種類の異なる座位姿勢における等尺性筋力を測定した。測定に際しては、センサー部分を下腿遠位部前面に面ファスナーにより固定し、固定用ベルトの長さを下腿下垂位になるように調節し、さらにマットプラットホームの支柱に連結した。約5秒間の最大努力による膝伸展運動を30秒以上の間隔をあけて2回行い、その最大値を採用した。また、異なる設定の測定は、日を変えて実施し、測定値は全測定終了時点までは被験者には開示しないこととした。なお、いずれも同一の検者(34歳、身長171cm、体重55kg)が測定を行った。分析方法としては、各姿勢間の関係について一元配置の分散分析、およびピアソンの相関係数を用いて検討し、危険率1%を有意水準とした。【結果】等尺性膝伸展筋力測定値は、腕組み47.09±15.28kg、縁掴み42.33±13.97kg、傾斜51.39±14.55kgであり、縁掴み-傾斜間に有意差が認められた。各座位間におけるピアソンの相関係数は、腕組み-縁掴み、縁掴み-傾斜、傾斜-腕組みの順に、0.872、0.818、0.890であった。【考察】先行研究において用いている座位姿勢は腕組みであるが、今回の結果から、異なる座位姿勢が測定値に影響を及ぼし、いずれの測定方法でも同様な測定値が得られる訳ではないことが考えらた。したがって、異なる座位姿勢での測定値の比較には問題があり、座位姿勢を明確にすること、および測定値を他施設間等で比較する際は、基本的には座位姿勢を同一にすることが必要であると考えられた。また、山崎らは腕組みの方法を用いた各種移動動作との関連を報告しており、腕組みで統一することにより再現性が図られ、広く臨床に用いることが可能であると考えられた。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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