理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: NP725
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測定・評価
急性期脳血管障害および大腿骨頚部骨折を呈した長期透析患者の理学療法の経験
2症例での検討
*小野田 博繁関 勝篠原 宏幸中沢 稔田中 伸明千野 直一
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抄録
【はじめに】一般的に、透析患者に運動療法を施行する場合、非透析患者の場合と異なり、様々な問題点を考慮に入れなくてはならない。しかし、合併症を呈する透析患者におけるリハビリテーションについての報告は極めて少ない。 今回我々は、多彩な合併症を有した長期透析患者に関する理学療法場面での血圧(以下BP)・心拍数(以下HR)の変動、および自覚的疲労度(Borg scale:以下BS)の測定を試みたので報告する。【対象と方法】症例1:右視床出血、左片麻痺を発症した52歳男性。20年前に腎移植を受け、その後、血液透析が導入されている。また、骨頭壊死の既往があり、左右人工骨頭置換術を施行されている。症例2:転倒により左大腿骨頚部骨折を呈し、骨接合術を施行された64歳女性。糖尿病性腎症により血液透析が導入されており、高血圧・心肥大・右内頚動脈閉塞および糖尿病性網膜症などが併存する。 以上の2症例において、安静時・ベッド上運動時・歩行時のBP・HRおよび自覚的疲労度としてのBSを測定して比較検討を行った。【結果と考察】BP・HR・BSとも歩行時などの運動場面で上昇し、日によって経時的な変化を認めた。訓練開始時より、しばしば訓練が休止となる日も存在したことから、合併症を有する透析患者に対して訓練を施行する際、十分な全身状態の把握が必要であると考えられた。またHRとBSの相関は認められず、BSの方が高い値を示したことから、HRから予想できる疲労度以上に、患者本人の自覚的疲労度は大きいことが推測された。このことから、HRおよび自覚的疲労度の両面から運動強度を判断する必要があると考えられた。 さらに、BSの13「ややきつい」を至適運動強度とした場合の本症例の目標心拍数は、予測最大心拍数の約50%前後であったが、多彩な合併症を呈する透析患者においては、至適運動強度などのリハビリテーション上のエビデンスを確立する必要があるものと推察された。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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