抄録
[目的]介護や農作業など長時間の同一姿勢がもたらす筋疲労性の腰痛の訴えは臨床上多く聞かれる.腰痛に対する理学療法的介入方法の一つとして,ストレッチがある.しかしながら下肢筋筋疲労に対するストレッチ効果の文献は多く見られるが,腰背筋に対する効果は明らかにされていない.今回,trunk holding testにより筋疲労が生じた腰背筋に対してストレッチの介入を行い,その効果を安静のみの介入と比較し,筋電図学的に検討した.[対象]腰部の疾患がなく,腰痛のない健常男性10人とした.[方法]Sorensenのtrunk holding testを行った後,ストレッチ介入または安静のみの介入(安静介入)を加え,再びtrunk holding testを行った.Trunk holding testはそれぞれ2分間行った.ストレッチ介入は1分間のストレッチを行った後,4分間の安静位を保持した.ストレッチはWilliamsの方法に従い,両膝を抱え胸部へ近づけ腰背筋の伸張をした.安静介入は5分間の安静位を保持した.ストレッチ介入と安静介入は日を改め,十分に疲労を回復した後に行った.表面電極は第3,5腰椎棘突起右側方に貼り,表面筋電計(NORAXON社製Myosystem1200)を用いて測定した. 筋電波形は介入前後の2分間のtrunk holding test を記録した.波形は2秒毎に周波数解析を行い,median frequency(MF)のslopeをy-interceptで正規化した(normalized MF slope).L3とL5それぞれに,ストレッチ介入と安静介入前後のnormalized MFslopeをWillcoxonの検定により比較した.ただし,有意水準は5%とした.[結果]normalized MFslopeの平均値は,L3のストレッチ介入前-0.25±0.1,後-0.26±0.1,安静介入前-0.23±0.12,後-0.31±0.13,L5のストレッチ介入前-0.26±0.1, 後-0.29±0.1,安静介入前-0.26±0.12,後-0.33±0.12であった.L3,5ともに安静介入後にnormalized MFslopeが有意に大きかった.[考察]安静のみの介入後ではnormalized MFslopeが大きく,疲労の影響がみられたが,ストレッチ後のnormalized MFslopeはストレッチ前と比べ有意差はなく,疲労の影響は小さいと考える.以上のことから腰背筋の筋疲労に対し,ストレッチは効果があると考える.