抄録
【はじめに】 高齢者,身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(以下,交通バリアフリー法)に基づき,市町村による基本構想の策定が行われている.当市でも,基本構想の策定が行われており,その一環として交通バリアフリー体験会が行われた.その中で車椅子体験について企画段階から関わり,参加者の意見をまとめたところ,一般的には傾斜路に対する車椅子の駆動負担の認識が低いことがわかった.【方法】 1)体験場所:八千代市役所から最寄り駅までの約700m.明らかな高低差はなし.2)参加者:一般公募による市民,交通バリアフリー法基本構想策定協議会委員,記録者としての学生の計18名,さらに,アドバイザーとして3名の当事者と,基本構想策定に関わる関係機関職員の参加を得た.3)体験方法:車椅子体験者1名,介助者1名,記録者1名の3名を1グループとし,全6グループで実施した. 往路は,復路で車椅子に乗った場合に考えられる不都合を各グループで討議しながら歩いた.復路は往路と同じ経路で車椅子を利用し,走行上どこに不都合があるかを討議してもらった. 討議内容は,経路の地図に主たるチェックポイントの10箇所の写真を添付した記録用紙に記載してもらった. 【結果】 討議された場所は,往路は延べ45箇所,復路は延べ76箇所.復路は往路の約1.7倍であった. 討議内容の内訳は,往路で最も多かったのは進行方向に平行な傾斜(以下,平行坂)13箇所,次いで段差10箇所,舗装等の路面の状態9箇所,歩道上のポール等7箇所,等であった. 復路で最も多かったのは平行坂20箇所,次いで進行方向を横切る傾斜(以下,横断坂)19箇所,舗装等の路面の状態14箇所,段差7箇所,等であった. 横断坂については,往路では全く討議されていなかった.【考察】 今回の結果から,一般的には傾斜路に対する車椅子駆動の負担の認識が低いことがわかった.特に,横断坂については,往路では全く討議されていないことから,体験しない限り,その負担の認識が非常に低いと考えられる.平行坂についても,一般的には,段差を解消する傾斜であれば車椅子の走行は可であると認識されている場合があると考えられる. 平行坂は,傾斜路として勾配を交通バリアフリー法等で規定されているが,既存の傾斜を全て改修することは不可能である.また,横断坂は,交通バリアフリー法等でも規定はなく,排水や車寄せ等の関係上皆無にすることは不可能である. これらのことから,車椅子駆動の道路のバリアに関する体験会では,傾斜路を含むコース設定が必要であり,そのことが,交通バリアフリー法の基本方針の「心のバリアフリー」の啓発につながる一つの手段になると考えられた.