抄録
【はじめに】介護予防事業の積極的運動介入の取組みとして「高齢者筋力向上トレーニング事業」が予算化された。これにより筋力トレーニング機器を具備した施設が全国市町村に徐々に広がりつつある。今回我々は在宅における3ヶ月間のトレーニング期間を設定し、身体運動機能と共に心理面やQOLにどのような変化を生じたか調査を行ったので報告する。【対象と方法】奈良県田原本町「アクティブシニア教室」で介護予防を目的とした教室を実施した。参加条件は男女60歳から65歳で、最近身体運動機能の虚弱化や閉じこもり傾向を自覚し、アンケート調査からその傾向が確かな者20名(男性4名、女性16名)を抽出した。また比較検討のため統制群11名にも検査を実施した。検査項目として身長、体重、体脂肪率、BMI、最低最高血圧を基本調査項目、運動機能としてSenior Fittness Testから、椅子立ち上がり検査(回/30sec)、腕まげ検査(回/30sec)、6分間歩行検査(m・歩数)、椅子柔軟性検査(_cm_)、Functional Reach Test(_cm_)、8feets Up & Go Test(sec)の6種類の検査項目、またバランス機能の評価としてBiodex社製スタビリティーシステムを用い検査した。筋力は、膝伸展・屈曲を酒井医療製徒手筋力測定計で検査した。さらに日常生活々動量を評価するためライフレコーダーを用いた。一方、心理面やQOLを日本版SF-36、PSE質問調査、自尊感情(尺度)を使用し調査した。各検査は運動実施前と3ヶ月経過後に実施した。また、定期的に面接や講義などを行い、運動効果を意識し、自己管理の必要性や生活の中に能動的な運動習慣を組み入れて過ごすことの重要性を自覚できるよう行った。【結果及び考察】運動群における身体機能面の全調査項目で運動前後における時間的効果が有意(p<0.05)に認められた。また、バランス機能においては統制群との間で交互効果に有意な差が出現した。また、運動群中バランス機能下位10名に対しエアロクッションを使用し座位バランス訓練を中心に行ったところ、立位バランス向上効果は運動群バランス機能上位10名(立位バランス訓練実施)に比して有意(p<0.01)に高い訓練効果が得られた。これは、坐位体幹バランス機能を強化、再教育することが立位バランスに大きな影響を及ぼすことを示唆している。またQOLにおいては、全体的健康観で運動群が統制群に比して教室終了後有意(p<0.004)に向上した。社会的生活機能においても運動群は統制群に比して教室終了後有意(p<0.05)に向上した。また、自尊感情も運動前後で大きく向上していることがわかった。一方、在宅プログラムの取組みで問題となるのは運動の継続性であり、ライフレコーダーの結果から20日間前後の周期で活動量が下降する傾向があり、教室実施途中で行われた面接や講義が再び活動量を上昇させる一因となっていることが結果から推察できる。以上、本教室の在宅での介護予防の取り組みが高齢者介護予備群の身体運動機能やQOL向上に有効であることが示唆された。