抄録
【はじめに】通所リハビリテーション(以下、通所リハ)を利用する理由は利用者によって様々であるが、実際通所リハを利用していない地域在住高齢者との運動機能にどの程度の差があるかは明らかではない。今回、我々は通所リハ利用者の運動機能を把握し、在宅での生活に役立たせることを目的に、通所リハ利用者と地域在住高齢者との運動機能の相違について評価し、若干の知見を得たので報告する。【対象と方法】対象は当施設通所リハ利用中の62名(平均年齢80.0±6.99歳、男性13名、女性49名)と転倒予防教室に参加された地域在住高齢者20名(平均年齢72.5±4.37歳、男性8名、女性12名)である。抽出条件は1)歩行可能な者(独歩または杖使用者)、2)測定者の指示が通る者とし、体調不良の者や移動手段が車椅子の者は除外した。運動機能評価は10m全力歩行、最大一歩幅、30cm踏み台昇降(1分間)、40cm台からの立ち上がり(1分間)、片脚立位、3種類の高齢者用バランスボード上の立位保持能力、指床間距離の7項目で行なった。同時に家族構成、経済状態などの社会生活状況についても調査した。統計処理は、通所リハ利用者と地域在住高齢者について各運動機能評価項目の差の検定(t検定、Mann-WhitneyのU検定)を行い、次に、通所リハ利用者もしくは地域在住高齢者を従属変数とし、年齢、性、世帯状況(独居、老夫婦、二世帯の3群に分類)、経済状況、各運動機能評価(最大一歩幅、40cm台からの立ち上がり、バランスボードによるバランス機能分類、指床間距離)を独立変数としたロジスティック回帰分析を行った。 【結果】通所リハ利用者は、地域在住高齢者と比較して、10m全力歩行、最大一歩幅、30cm踏み台昇降、40cm台からの立ち上がり、片脚立位、高齢者用バランスボードを用いたバランス機能評価の6項目で有意に低値であった(それぞれP<0.01)。指床間距離は、2群間に有意差はなかった。ロジスティック回帰分析の結果、指床間距離を除く各運動機能評価項目(最大一歩幅、40cm台からの立ち上がり、バランスボードによるバランス機能分類)が有意であった(P<0.01)。【考察】通所リハ利用者と地域在住高齢者との運動機能を比較した結果、指床間距離以外の運動評価項目で通所リハ利用者が低値であった。このことから、地域在住高齢者に比べて通所リハを利用する高齢者は運動能力に乏しく、運動能力の維持・改善が地域での社会生活を維持する上で重要な要因であろうと考えられた。