理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PP166
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地域リハビリテーション
通院・通所系サービスへの移行に関わる利用者の主観的体験の分析
*名取 悟美松村 剛志請川 信之石垣 泰則
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抄録

【はじめに】訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)は、期間限定型が望ましく、閉じこもりを防ぐという観点から通院・通所系サービスに結び付けること(以下サービス移行)が重要といわれている。しかしながら、サービス移行に対して強い抵抗を示す利用者がいることも事実である。そこで今回、サービス移行を経験した利用者にインタビュー調査を行い、当事者の主観的体験からサービス移行の影響を分析しようと試みた。【対象】平成12年4年から平成14年6月までにサービス移行した20名のうち、平成14年10月現在において、当院の通院・通所を継続している12名(男性5名、女性7名、平均75.58±6.04歳)を対象とした。このうち利用者本人からのインタビューが9名、残り3名は、介護者または本人・介護者同席で行った。【方法】(1)面接方法:サービス提供に直接関わらない職員が半構造化面接を実施し、面接場面を対象者の許可の下に録音した。(2)データ分析:録音テープよりトランスクリプトを作成。その中から質問内容に関わる記録を選び出し、類似項目ごとにコード化した。抽出されたコードの相互関係を分析すると共に、これらをまとめてカテゴリーを生成。以上のプロセスは、訪問リハを担当している理学療法士2名が実施した。【結果と考察】訪問リハを終了し、サービス移行を打診された利用者にはサービス移行に対するアンビバレンスな思いが生じる。これは「サービス移行がよいことである」という思いと、環境の変化に対する不安からなる。その不安を軽減させるために、利用者は心理的サポートと物理的サポートを得ている。心理的サポートとは、サービス提供者を信頼することや、家族・知人に相談し励ましを得ることである。物理的サポートには、(1)事前見学の実施、(2)通院手段の確保、(3)代替サービスの確保、(4)住宅改修が挙げられる。これらサポートを得ることで、利用者はサービス移行に同意し、実際に通院・通所をすることとなった。サービス移行した結果、利用者には(1)生活リズムの形成、(2)生活範囲の拡大、(3)ピアサポートの獲得、(4)訓練意欲の向上、(5)身体機能の改善が認められた。一方で、サービス移行前と「生活が全く変わらない」という訴えもあった。 以上より、利用者がサービス移行に伴う不安に対して、様々な心理的・物理的サポートを得ることで対処している現状が明らかとなった。また、サービス移行による変化を、心理的・社会的側面から肯定的に位置づけている傾向も認められた。本研究は、研究者自身の価値観や態度が分析過程に混入しやすいという限界を持っている。しかし、サービス移行を促進する上で、利用者のアンビバレンスな思いを理解し、その対処方法を提示することの有効性と、身体的側面だけではなく、心理・社会的側面からサービス移行の効果を判定することの必要性が示唆された。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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