抄録
【目的】介護保険制度における要介護度は、認定調査の結果から要介護基準時間を算出し認定される。しかし、この要介護基準時間の算出については種々の問題が指摘されており、実際に介護を受けている時間との相違も大きいと指摘されている。今回、通所リハビリテーションサービス(以下通所リハ)を利用している要介護者が、直接サービスの提供を受けている時間について着目した1分間タイムスタディーを実施し、要介護度との関係について検討したので報告する。【方法】兵庫県および岡山県下の介護老人保健施設に併設された通所リハ施設5施設の利用者のうち、調査について承諾の得られた要介護者31名(男性14名、女性17名、平均年齢76.7±10.91歳)を対象とした。調査日は平成14年8月下旬から9月上旬の期間中の1利用日とし、対象者が通所リハ施設に到着した時から帰宅までの施設内滞在時間中の1分毎の活動内容について記録した。記録された活動内容を介護職者が関わっている時間については、食事・排泄・入浴の3大介護ならびにその前後の移動に関わっている時間を「基本介護時間」、レクリエーションや会話等で職員が関わっている時間を「拡大介護時間」、職員は関わらず利用者間での交流がある時間を「交流」、そして、単独でいる時間のうち、何らかの目的をもった活動をしている「目的のある活動時間」と特に活動をしていない「無目的な活動時間」の5つに分類し、それぞれの合計時間を算出した。また、介護職者の関わっている時間については、相対的な人数比による介護密度も算出した。各時間について一元配置分散分析を用いて要介護度との関係を分析した。【結果】要介護者の平均滞在時間は373.4±26.6分であり、基本介護時間密度は43.8±34.12分、拡大介護時間密度は33.9±22.12分であった。要介護度との関係においては、基本介護時間、交流、単独活動時間、基本介護時間密度において差がみられ、要支援ならびに要介護Iでは基本介護時間ならびに密度が少なく、交流の時間の割合が多かった。介護職者が関わっていない時間については、要介護度別による差違は認められなかった。【考察】介護職者が関わっている時間は、要支援ならびに要介護Iでは他に比べて短時間であることが明らかとなったが、それ以外では明確な差がみられなかった。このことは、要支援並びに要介護Iの利用者の日常生活の自立度が高いことを示すとともに、各要介護度で想定されている要介護基準時間と実際の介護時間との間に乖離が存在していることを示唆するものと考えた。また、利用者それぞれの必要性に応じて介護サービスが提供されている事も乖離を生じさせる一要因と推察された。通所リハビリテーションの介護報酬体系は要支援、要介護IとII、要介護IIIからVの3区分に分けられているが、実際の介護提供時間を基準に考えた場合、要支援と要介護Iの群と、要介護IIからVの2群に分けた方が実際の介護の手間を反映したものになるのではないかと考えられた。