理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PP265
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地域リハビリテーション
訪問リハビリテーションにおける日常生活動作の支援として効果的な運動療法
*高橋 昌二加藤 貴彦植松 美樹川上 正人中島 一彦
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抄録
【はじめに】通院困難な在宅身体障害者に対する訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)は、日常生活動作(以下、ADL)を含む生活全般および心身の支援を目標とするが、本人および介護者の現実的なニーズは、ADLの各動作において身体障害や理解力低下が原因で将来的にも改善困難な応用動作能力の改善よりも、主に本人の活動性や介護者の労力に直接関わる基本動作能力とその要素である運動機能の改善または維持(悪化防止)を図ることである。今回、訪問リハを実施しADLの支援として効果のあった運動療法について若干の知見を得たので報告する。【対象】男性20名、女性19名。平均年齢75歳。主な傷病名は脳血管疾患、パーキンソン病など。要介護度は1-5名、2-8名、3-2名、4-7名、5-17名。【方法】基本動作能力の目標設定は動作が大変な夜間や寝起き直後および体調不良時でもできるだけ安全で安定し日中の活動的な時間帯は更に安楽に行なえるレベルとする。以下のエクササイズを必要に応じて実施する。1.拘縮に対する関節可動域エクササイズ:ソフトマッサージ・関節運動学的アプローチ・個別的筋ストレッチ、寝たきりでも筋収縮の要素があれば自動介助運動を行なう。2.筋力低下に対する筋力エクササイズ:基本動作に重要な体幹と両下肢を主体に行なう。主動作部位と効果を示す。シットアップとレッグレイズは、前者が上部腹筋群で後者が下部腹筋群とともに股関節屈筋群を強化し寝返り・起き上がり・寝転びに有効。ホールドブリッジは、背腰殿筋群を強化しベッド上の移動に有効。ハーフスクワットは、大腿四頭筋遠位部を強化し椅子・ベッド・便器などの起立・着座に有効。フルスクワットは、大腿四頭筋近位部を強化し床および浴槽内などの起立・着座に有効。3.心肺・筋持久力低下に対する持久力エクササイズ:心拍数が(220-年齢)×60から90%の範囲を目安に行なう。4.基本動作エクササイズ:実際に動作を行なう場所での起居動作や、屋内や屋外での移動動作を行なう。【結果】全症例において悪化の進行を防止し、運動機能および基本動作能力改善を図ることで、ADLで目標とする各動作の自立度維持または改善と、介護の手間(時間と労力)の維持または軽減に結びついた。【考察】訪問リハは、経時的変化に合わせてADLを本人の自立度・介護者の手間・環境から多面的に捉え、各動作の能力障害と機能障害の関連性を明確に評価して支援方法を決定する。支援方法の概要は、歩行や車椅子での生活の人には全身的動作である更衣・排泄・入浴・起居・移動の各動作に対し拘縮改善・筋力増強・持久力向上などを目的とする運動および動作練習を必要に応じて行ない、寝たきりで介助量の多い人には更衣や身体清潔(入浴・清拭・オムツ交換など)で介護の手間の増大予防を図るため拘縮悪化防止を主体に実施する。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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