理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PP681
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地域リハビリテーション
訪問リハビリテーションにおける目的の理解に関するパンフレットを用いた説明の効果
*矢野 秀典吉野 貴子飯島 節
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抄録
【研究背景】我々は、先行研究において訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)を利用している患者・家族のその目的に関する自覚的理解度は高いものの、実際の理解度は極めて低いことを明らかにした。この現状を踏まえて我々理学療法士(以下、PT)がいかにして、その理解度を向上させるかを検討することは意義深いものと考えられる。【研究目的】患者・家族に対するパンフレットを用いた目的の説明が、理解度・満足度に及ぼす影響を検討することである。【対象】訪問リハを定期的に受けており、前述した先行研究において、理解度が低値を示した13組の患者および家族。【方法】訪問リハにおける実施種目それぞれの目的を患者・家族に対してパンフレットを用いて説明した。この説明の直前および3ヵ月後に郵送法によりアンケート調査を行った。調査項目は、自覚的理解度、実施種目それぞれの目的、満足度とした。理解度は、担当PTが意図している目的と患者・家族が理解している目的との一致をもって、理解していると定義した。また、満足度はVisual Analogue Scale(VAS)を用いて評価した。統計手法は、対応のあるウィルコクソン検定を用いた。【結果】9組の患者5例、家族9例から回答が得られた(回収率、69%、患者は痴呆等のため回答不能例が4例あった)。1.自覚的理解度の変化 患者・家族ともに説明前より自覚な理解度は非常に高く、説明前後での比較において家族1例で向上を認めたものの、その他の患者・家族においては変化がみられなかった。2.実際の理解度の変化 実施種目全体の平均理解度は、説明前が患者36.7±32.0%、家族28.6±30.2%、説明後は同様に、52.7±29.3%および57.9±31.2%と患者・家族ともに説明後に向上を示した(患者:P=0.07、家族:P=0.008)。また、実施項目間の理解度には差を認めなかった。3.満足度の変化 説明前から患者65.7±23.2/100、家族65.9±14.9/100と高かく、説明後では、それぞれ75.3±17.3/100、76.8±14.7/100とさらに向上を認めた(患者:P=0.07、家族:P=0.03)。【考察】理解度の低さは訪問リハ実施に際し、阻害因子になりうると考えられる。その患者・家族の理解に関して、PTの説明方法にも問題があることも考えられたことから、今回、パンフレットを用いた説明が訪問リハにおける目的の理解度ならびに満足度に及ぼす影響を検討した。 患者は症例数が少なく有意ではなかったものの、このパンフレットを用いた説明により理解度、満足度ともに向上が認められた。しかしながら、理解度は100%には達せず、他の説明方法の導入や症例により説明方法を変化させるなど、さらなる工夫の必要性が示唆された。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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