理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PP680
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地域リハビリテーション
訪問リハビリテーションサービス利用者のやる気に影響する因子
*平林 大輔加藤 徹菅原 里美北村 美樹中嶋 奈津子中田 隆文
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キーワード: やる気, 訪問リハ, 介護保険
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抄録
【はじめに】 介護保険下の訪問リハビリテーションサービス(以下訪問リハ)の目的には精神面の活動性向上が論じられている。諸家により患者のやる気とADLとは関係があることが示され、さらに身体機能障害が同等にも関わらず患者のやる気によってADLが異なる事例の経験からも患者のやる気の評価は意義があると考えられる。今回、介護保険で訪問看護7および訪問リハビリテーションのサービス利用者(以下利用者)を対象にやる気の調査を行い、やる気に影響する因子を検討した。【対象】 平成14年10月現在、盛岡市及び盛岡市に隣接する町村で、事前調査で本研究に協力の得られた4事業所、3施設で調査を行った。調査対象の利用者は理解力に問題がなく、かつ調査に同意の得られた98名とし、有効回答が得られた55名(男26名、女29名、平均年齢76.8±9.70歳)を検討対象とした。回収率は56.1%であった。【方法】 やる気の指標として岡田らのやる気スコア(以下スコア)を用いた。調査は無記名で自記式または介護者の代筆にて行った。要因として基礎疾患、要介護度、在宅療養年数、痛みの有無、痛みによるADL障害の有無とした。分析にはそれぞれの要因について回帰分析を行い、危険率5%未満をもって有意とした。【結果】 基礎疾患は中枢神経疾患39例、整形外科疾患15例、循環器疾患1例であった。要介護度は要支援が1名、要介護1が15名、要介護2が10名、要介護3が14名、要介護4が8名、要介護5が7名であった。在宅療養年数は1年以内23例、2年以内10例、3年以内9例、4年以内3例、5年以上10例であった。痛みは55名中39例に認めた。痛みによるADL障害は55名中30名に認めた。回帰分析の結果、要介護度(R2=.156、p<.01)、痛みによるADL障害の有無(R2=.109、p<.01)について有意差を認めた。【考察とまとめ】 利用者のやる気に影響する因子として要介護度、痛みによるADL障害が示唆された。要介護度は介護にかかる時間で算出されるが、諸家により要介護度に影響を与える因子としてADL能力と環境要因が示されている。今回の結果より、訪問リハでは痛みによるADL障害の改善、環境整備に関するアプローチが利用者のやる気の維持、向上に効果的であることが考えられた。利用者の痛みは頻回に出現する問題点であり、さらにADLやQOLに関係する項目とされる。今回、痛みの有無についてはやる気に影響する有意な因子とは認められず、ADL障害を認めることで影響することが示唆された。やる気に影響する要因としての痛みとADL障害については、その具体的な程度や原因などについて今後、検討する必要があると考えられた。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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