抄録
【はじめに】 遷延性意識障害はじめ長期臥床をしている症例(以下長期臥床群)では廃用性症候群の一つとして骨萎縮があげられており、我々が訓練を行う際に骨折のリスクが高いとされている。今回当院入院中の遷延性意識障害による長期臥床群の骨密度を測定し、健常者との比較、罹病期間による骨密度の経時的変化および、年齢との関連について比較検討したので、若干の考察を加えて報告する。【対象および方法】対象は当院の特殊疾患療養病棟に入院中の遷延性意識障害患者45例(男性23例女性22例 平均年齢64.1±11.3歳、平均罹病期間4.2±3.2年)である。全症例の体位変換および栄養補給の時間・方法、PT・OTによる四肢ROM訓練の頻度等、生活環境はほぼ同じである。骨密度の測定は超音波踵骨測定装置A-1000EXPRESS(GE Lunar社製)を使用、スティフネス・超音波骨密度指数(以下スティフネス値)を算出、同年齢健常者との比較、罹病期間および年齢との関連について比較検討した。【結果】1.同年齢健常者と長期臥床群との比較:長期臥床群の同年齢比較は45.8±15.3%であり、著明なスティフネス値減少を認めた。長期臥床群の男女の比較は男性に比べ女性の方が有意にスティフネス値が減少していた(P<0.05)。2.罹病期間とスティフネス値の間に負の相関関係を認めた(P<0.05)。罹病期間4年でスティフネス値は同年齢の37.8±10.4%となり以後著明な減少は認めなかった。同年齢の22%以下となる症例は認めなかった。3.年齢とスティフネス値の間に相関関係を認めなかった。【考察・まとめ】同年齢健常者に比べ長期臥床群のスティフネス値が著明に低下していたのは、荷重などの運動負荷がかからないことにより血流量が減少するため骨成分であるCa・蛋白質など栄養素の供給減少、骨自身のCa吸収低下が生じたためと考える。また、自動運動が困難である長期臥床群では、筋肉からの骨への刺激の減少もスティフネス値減少の大きな一因と考えられた。年齢とスティフネス値の間に相関関係を認めなかったこと、罹病期間とスティフネス値の間に負の相関関係を認めたことより、スティフネス値減少には罹病期間が大きく関連しており、骨量維持には荷重負荷を与えることが重要であると考える。罹病期間4年でスティフネス値が同年齢の37.8±10.4%となり減少はほぼプラトーに達すること、同年齢の22%以下となる症例を認めなかったことより、この値が臥床した状態での生命維持に必要最低限のスティフネス値ではないかということが示唆された。今回の研究により長期臥床群の骨密度は非常に低く、我々が訓練を行う際に骨折をおこさないよう細心の注意を払う必要があること、荷重などの運動負荷が骨量維持に重要であることを再確認することができたので今後の治療に反映していきたいと考える。