理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: QP713
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調査・統計
精神科病棟における転倒事故の現状
第一報
*細井 匠秋元 拓記藤原 康紀山下 久実牧野 英一郎武田 秀和
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キーワード: 精神科病棟, 高齢化, 転倒
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抄録
[はじめに]精神病院入院者の状況は数ヶ月程度の短期入院者と5から10年を超える長期入院者と二極分化しており、長期入院者の高齢化への対策が問題となっている。現在65歳以上の比率は三割に達しており、今後さらに高齢化が進展することが予想される。このような状況の中、精神疾患患者の転倒事故に関する報告はなされていないのが現状である。当院の精神科病棟でも、長期入院に伴う高齢化が進展しており、転倒事故による外傷や骨折の発症が多々あり、今後転倒予防への取り組みが急務となっている。そこで今回、基礎的調査として精神科病棟における転倒の発生状況を調査した。[対象・方法]対象は当院精神科病棟に1年以上入院中の精神疾患患者(ICD-10)で、歩行が自立している129名(男性79名、女性50名)である。調査方法は対象者の診療録、看護記録から、年齢、身長、体重、BMI、疾患名、既往歴、当院入院歴、抗精神病薬・抗不安薬処方量、転倒の発生状況と外傷、骨折の有無を調査項目とし、後方視的に調査した。調査期間は平成13年8月1日から平成14年7月31日までの一年間とした。[結果]精神科病棟で過去一年間に129名の対象者のうち28名(21.7%)が68件の転倒事故を起こしていた。男女別に見ると男性では79名中15名(19%)が、女性では50名中13名(26%)が転倒していた。また、68件の転倒事故のうち外傷を負ったものは32件(47%)であり、そのうち5件(7.4%)が骨折を伴い他院へ転院していた。病棟別に比較すると、閉鎖病棟では80名中21名(26%)、開放病棟では49名中7名(14%)が転倒していた。転倒場所は病棟ホール、自室、廊下の順に多かった。特筆すべき点は同一者が複数回転倒していることで、最も高頻度の人は年間12回も転倒していた。調査項目の平均値を転倒群(28名)と非転倒群(101名)で比較すると、身長、体重、BMI、入院歴、抗精神病薬・抗不安薬処方量においては両群の間に有意差は認められず、年齢においてのみ、転倒群が64.5±7.4歳と非転倒群の59.7±11.0歳に比べて有意(p<0.05)に高かった。両群の既往歴を比較すると、中枢神経系疾患や代謝性疾患、整形外科疾患の既往歴を持つ人が転倒群では46.4%と高い値を示し、非転倒群では11.9%であった。[考察]今回の調査の結果、転倒経験者は、未経験者に比べて年齢が高く、中枢神経系疾患、代謝性疾患、整形外科疾患を持つ傾向がある事が示唆された。また、女性と、閉鎖病棟において転倒発生率が高い事が確認できた。今後は転倒を繰り返している人の、精神症状と転倒の関係性についても調査する必要があると考える。転倒調査用紙を作成し、個別に評価・運動を行いながら調査を継続する予定である。さらに、他科と連携し、環境整備、器具、履物も含めた多角的な対策を実施する予定である。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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