抄録
【はじめに】 理学療法士・作業療法士(以下,PT・OT)の養成教育は,態度・知識・技術の習得を目標にしている.その中で,臨床実習における指導形態は,各実習施設の指導者が直接患者を介して指導する形式をとっている.しかし,実際には症例レポートを介しての指導が中心となっており,知識・技術・態度について十分行われていないのが現状である.また,臨床実習の評価結果からは各指導者ごとの採点基準が一定していないことが問題となっている.そこで,我々は臨床に必要な知識・技術・態度の到達度を客観的にとらえるため,近年,医学部教育の中で注目されている客観的臨床能力試験(以下,OSCE)を用い,その有用性について検証ので報告する.【対象】 対象者は,平成14年度に3年次の臨床実習実施中である理学療法科6名・作業療法科5名とした.【方法】 まず,OSCEを3段階に定義付けした.レベル1(1年生対応)は, 医療人として基本的態度をそなえていること,訓練機器および介助法が理解できていること.レベル2(2年生対応)は,各種検査・測定方法を説明でき適切に実施することができる.レベル3(3年生対応)は,患者の状態に応じて適切な訓練を実施することができる(具体的には:口頭指示レベルで訓練を実施する,介助しながら訓練を実施する,患者のリスクを考慮して訓練を実施する)とした.今回は,各レベルから一つずつOSCE項目を設定し実践した.レベル1は,患者との会話を通して適切にコミュニケーションがとれるかを評価目的とした「接遇・態度」,レベル2は,肩関節外転のROM測定,レベル3は,口頭指示による移乗訓練とした.対象者は,1ステーション5分間の評価時間を設けて3箇所行った.評価者はPT・OT合計4名配置し,模擬患者はPTが行った.【結果・考察】 OSCE項目における評価者間の相異において,接遇・態度では,挨拶の有無や視線の高さなど,評価者が判断しやすい項目では一致していたが,声の明瞭度や仕草・表情などにおいて差が生じやすかった.ROM測定では,ゴニオメータの軸の合わせ方など評価者の見る方向に注意が必要であった.また,ROM測定・移乗訓練など技術を必要とする項目においては,各評価者間の到達目標に相異がみられた.今後は,まず評価者において学生だけでなくPT・OT有資格者を評価することにより技術レベルの到達目標を知ることが重要と思われた.また,被験者に対して評価後に技術レベルでのフィードバックをする必要があった.さらに,模擬患者においても同様な患者像を提供できるようトレーニングの必要性を感じた.