抄録
【はじめに】医療技術者には、心の豊かさ「思いやり意識(愛他意識)」が強く求められる。第36、37本学会で理学療法学科学生(PT学生)の「思いやり意識」が、同世代の高校生や大学生より強いことを報告した。今回「思いやり意識」と関連のある意識や態度について調査し、その関係を検討した。中里が考案した愛他性調査票を改変し、信頼性を検討し本調査票として使用した。同世代の大学生に同調査を実施し、PT学生と比較したので報告する。中里らは、最近の若者の意識や態度が諸外国と比較して悪化していることを報告している。今回の調査目的は、1.PT学生の思いやり意識に関連する意識や態度の特徴を見出すこと。2.愛他意識の強弱と関連する要因を明らかにすることである。【対象と方法】属性は、本学院PT学生129名(男性58名、女性68名)とT大学学生(大学生)158名(男性57名、女性101名)、計287名である。 調査方法は、質問紙法による集合調査にて実施した。質問紙は、「基本属性」「愛他意識」「道徳意識」「自制心」「共感性」「問題性格」「問題行動」「価値観(自己-他者中心、物質-精神主義、外的-内的統制、現在-将来志向、個人-社会志向)」に関する設問からなる。回答法は、それぞれ4段階尺度評定法である。各項目毎に得点を算出し、意識や態度の強弱に分類し、χ2検定(含イエーツの修正)にて検討した。【結果と考察】1.PT学生と大学生の意識態度を比較した。「愛他意識」は、PT学生が大学生より有意(P<0.01)に強かった。「問題行動」は、大学生がPT学生より有意(P<0.01)に強かった。「価値観」の中の「物質-精神主義」は、PT学生が大学生より有意(P<0.01)に精神主義であった。「現在-将来志向」は、PT学生が大学生より有意(P<0.01)に将来志向であった。「個人-社会志向」は、PT学生が大学生より有意(P<0.01)に社会志向であった。「生活習慣」は、PT学生が大学生より有意(P<0.05)に良い習慣であった。PT学生の意識・態度は、大学生と比較すると向社会的態度を有し、医療技術者として良好な価値観を有していた。元来このような意識・態度を持っている学生が入学していること、入学後の教育効果の両要因と考える。2.愛他意識の強弱と他因子の関係について、属性毎に比較した。大学生の「愛他意識」が強い者は、「道徳意識」も強く(P<0.1)、「共感性」も強く(P<0.01) 、「他者中心」(P<0.01)であり、「精神主義」(P<0.01)であり、「社会志向」(P<0.01)であった。PT学生では、「共感性」が強く(P<0.01) 、「精神主義」(P<0.05)であり、「社会志向」(P<0.05) であった。PT学生の「思いやり意識」は、大学生より強いものの、他要因との関連は大学生の方が強かった。PT学生の「思いやり意識」は、精神主義、社会志向とそれぞれ関係があるが、他要因との関係は認められなかった。さらなる関係性の明確化については今後の課題としたい。