理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: AO008
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主題(科学的根拠に基づく理学療法)
雑誌「理学療法学」はEvidence-based Medicine(EBM)初学者にとって有用な情報源となりうるか
EBM実践で利用する情報の伝達方法についての検討
*松崎 仁志
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抄録
【はじめに】EBMで利用する情報の有用性には,労力,関連性,妥当性の3要素があるが,今回は労力に着目した。労力にはその情報を得る労力と,その情報を解釈する労力とがある 。EBM初学者にとっては, EBMの手引書にある典型的な研究論文(以下「典型的な論文」)は解釈しやすく,有用な情報である。今回,理学療法士にとって入手しやすい雑誌である「理学療法学」において,典型的な論文がどの程度含まれているかを調査し,「理学療法学」がEBM初学者にとって有用な情報源となりうるかを検討した。【方法】対象は「理学療法学」第25巻第1号から第29巻第6号(1998から2002)で,特別号は除外した。全ての論文を読み,内容をデータベース化した。その際,日本理学療法士協会発行のデータベースを利用した。「典型的な論文」の抽出は今回作成したデータベースでの検索により行った。「典型的な論文」の条件を挙げる。1)治療が研究の直接的な目的である。治療が研究背景にある場合は条件に含めなかった。2)患者立脚型研究である。これは,患者を対象にして介入の効果を検証し,アウトカムが患者中心である研究を指す。患者中心とは,例えばADLの改善であり,生化学データ値の改善は患者中心ではない。3)研究デザインがランダム化比較試験 (以下RCT),比較臨床試験 (以下CCT),システマティックレビューのいずれかである。4)結果要約の方法が定量的である。具体的には,相対リスク,相対リスク減少,絶対リスク減少,治療必要数,効果サイズのいずれかを採用しているもの。ここでの結果は介入結果を指し,研究全体を考察した結果ではない。以上4項目全てを満たすものを「典型的な論文」とした。【結果】総論文数は339本で,研究論文であるものは179本であった。治療に関する論文は47本で,そのうち患者立脚型研究は25本であった。RCTは2本,CCTは9本,システマティックレビューは0本であった。さらに結果要約の方法が相対リスク,相対リスク減少,絶対リスク減少,治療必要数,効果サイズのいずれかであるものは0本であった。【考察】本調査の範囲では,「理学療法学」には「典型的な論文」は含まれておらず,EBM初学者にとって有用な情報源ではないことが分かった。RCTやCCTでの患者立脚型研究はあったが,定量的な結果要約の方法を採用していなかった。結果要約の方法とは情報の作り方ではなく情報の伝え方に関わることである。RCTは実施すること自体が難しいが,結果要約の方法は簡単に変更できる。例えば,介入群と対照群各々の事象発生率の差を検定し,「有意差あり」としている論文では,対照群事象発生率から介入群事象発生率を減算すれば絶対リスク減少の値を報告できる。論文の結果要約の方法を検討することにより,「理学療法学」はEBM初学者にとって有用な情報源になりうる。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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